2018 Fiscal Year Research-status Report
保育実践場面における保育者の観察力量を高める方法の開発
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18K02446
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
中澤 謙 会津大学, コンピュータ理工学部, 上級准教授 (30254105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 琢也 会津大学短期大学部, 幼児教育学科, 講師 (30410913)
西原 康行 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (50339959)
久田 泰広 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (70254084)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観察力 / 興味関心領域 / 省察 / アクションリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児期の子どもは言葉、運動コントロール能力、表現が未発達であることから、遊びの観察に基づく適切な援助が必要とされる。しかしながら保育中の観察は、その場その時の子どもの様子に応じて直感的に行われるため、言語化されずに暗黙知として個人内に止まり、他者と共有されにくいという特徴を持つ。そのため、具体的にどのようにして観察力を評価し効率的・効果的に観察力を高めていくのかという方法の提示には至っていない。そこで本研究では、【課題1】モバイル式の視線計測法を用い、経験年数の異なる保育者の保育中の視線の動きを直接追跡することで、視覚的注意配分や状況認識などの要素を抽出・可視化し、遊びの観察技能の習熟度の把握や技能評価のポイントを明らかにするとともに、【課題2】遊びの観察技能の評価基準を作成し、遊びの観察力量を高めるアクションリサーチに組み入れ、日常的に取り組みやすい遊びの観察スキル改善方法を開発することを目的とした。 1年目の今年は、データロガー方式の視線計測装置を用いて保育者の保育実践中の視線の動きを計測し、保育観察中の視線要素の抽出を試みるとともに、視線映像の振り返りを行なった。 保育観察中の視線要素を抽出するにあたり、興味関心領域(AOI)を任意で指定し、AOIそれぞれの注視回数(FC)及び、注視点の滞在時間の長さの平均値(FD)を算出した。加えて、保育者の助力内容をカテゴライズし、その出現回数を算出した。視線映像の振り返りを1)保育者単独、2)研究者を交えた半構造化面接に分けて行なった。その結果、保育者の観察力の特徴として、以下のことが明らかになった。①熟練飼育者は視野を広く用い、同時的処理や集団への目配りをしている。②保育計画や環境構成に対応したFC及びFDの比率に保育者間で差異がある。③経験の浅い保育者は省察内容に保育中の遊びのつながりの見立てや改善策との結びつきが少ない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドでの保育実践中のデータの収集を行うことを鑑み、データロガー方式の視線計測装置を購入することを優先し、解析時期を限定することで、研究開始に際する設備の課題は解決した。屋外において装置のシステム性能評価を行ったところ、太陽光の方向や視線の方向により測定が出来ないケースが想定されたことから、不用意な負担の発生を避け、データの取集は屋内での活動に絞った。2018年度中に保育学会(国内学会)、ECSS(国際学会)に研究成果を投稿し、2019年度中にポスターでの発表を予定している。機器の調達から調査研究開始までに時間を要し、対象園の行事や保育対応との兼ね合いで計画に遅延が生じてはいるが、視線計測機器の使用方法、データのカテゴライズ要件、実際の計測時間やタイミング等の課題を明らかにできたことから、概ね計画通り順調に進行していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、予定通りに実習生を対象に観察中の視線の順序、時間・回数の数値化及びリフレクションによる判断・援助の背景を抽出し、保育者の要素との比較分析に基づいて改善要素の絞り込みを行う。 短時間の視線データに必要とされる情報が十分に含まれることが見込まれること、データ取得後のAOIのカテゴライズに費やす時間や振り返り時の拘束時間に伴う負担を鑑み、計測時間を短縮し簡便化を計り研究を実施する。並行して研究成果の発表、論文の執筆に着手する。
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Causes of Carryover |
予定していたソフトウエアの費目をその他に計上していたが、物品費として計上すべきものだった。 また、学会旅費、人権費を次年度以降へと繰り越した。
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