2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造と倫理的基盤形成のメカニズムに関する研究
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18K02455
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
加藤 悦雄 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (60299823)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子どもの権利 / 子どもNPO / 子ども主体 / つながりの支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、本研究の基盤となる子どもの権利の視点について、それを子ども支援における単なる理念としてではなく、子どもを取り巻く児童福祉の課題を解決するための具体的な手段として生かすために、その方法論についての研究に取り組んできた。具体的には、①子どもの権利の視点に立つNPO団体へのヒアリング調査と参与観察調査をとおして、各団体が子どもの権利の視点をどのように位置付け、児童福祉実践に生かし、課題解決に取り組んでいるのか、子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造についてのデータ収集と予備的考察を実施したこと。合わせて、②人権概念に基づく当事者主体の社会福祉理論に関する文献研究に取り組み、上記実践内容に関する理論的背景・基盤についての検討を行った。 本研究の意義は、子育て支援や児童福祉の法定サービスが整備されてきた一方で、子ども虐待、貧困、いじめ、子ども・若者の自死、子どもが犠牲となる事故など、数多の問題が発生し、悪化している中で、サービスありきではなく、「子どもの権利に基づく、子どもを主体としたつながりの支援」の方法とその要件を明らかにすることである。こうした課題に応えるために、2018年度は、子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造として、①子どもを主体としたつながりを、「子どもの最善の利益」の配慮(条約3条)を軸とした支援によってつくり出すこと、②子どもを主体としたつながりの対象として、「子どもの権利条約」に規定された子どもの総合的な権利内容を活用できることを、データ分析と考察を通して導き出したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、①本研究を基礎づける文献研究、②子どもNPOに対するヒアリング調査等によるデータ収集と考察、③学会・研究会等への参加による資料収集・発表による内容の精査について進展させることができた。具体的には、以下のとおりである。 ①本研究を基礎づける文献研究・・・主体性の社会福祉理論を人権概念によって基礎づけた岡村重夫の福祉理論を検討し、子どもの権利に基づく児童福祉に応用する方法を明らかにすることができた。合わせて、子どもを主体とした支援を展開していく視点として、尾崎新や稲沢公一による「ゆらぎ」や「弱さ」の意義に光を当てた援助論を検討し、援助者の弱さが逆説的に子ども主体の支援を導き出すという考え方(アイデア)を導き出すことができた。 ②子どもNPOに対するヒアリング調査等によるデータ収集と考察・・・5つの団体に対してヒアリング調査を実施し、一例として次のような共通項を導き出した。すなわち、「子どもの本来の力」を開花させていくことが大切であり(子どもを変えるということではなく、望ましくない環境の中で子ども本来の力が妨げられている、それをどう開花させるのかという発想)、そのためにさまざまなやり方でつながりを求める子どもに、周囲のおとな(援助者等)がどう応答していくのかが問われており、その基盤として子どもの権利の視点が位置付けられる。 ③学会・研究会等への参加による資料収集・発表による内容の精査・・・予定していた「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポでの報告、家政学会夏季セミナーでの報告などを積み重ね、考察を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2019年度は、第一に、子どもNPOに対するヒアリング調査を引き続き実施し、根拠となるデータ収集を積み重ねていく。そして、1年目に予備的考察を進めた①子どもを主体とした支援を展開するうえでの子どもの権利の活用方法と合わせて、②①を可能にする要件である、子ども支援者の倫理的基盤形成のメカニズム(援助者の「弱さ」「傷つきやすさ」を内に含む考え方が想定される)の検討に取り組んでいく。以上の点について、データの整理と分析を積み重ね、それを根拠として考察と結論を導き出す作業に入っていく。 第二に、上記の延長として、研究を通して明らかになった成果を、段階的に報告することである。具体的には、学会報告、研究会報告、大学紀要、著書(共著)として、形にしていきたいと考えている。 第三に、1年目に予定していたが、主催者の関係で延期となった第5回アジア子どもの権利フォーラム(ネパール)に参加し、海外における子どもの権利に基づく支援内容を把握し、本研究の資料・データとして活用したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度に、第5回アジア子どもの権利フォーラム(ネパール)に参加し、資料を収集することを予定していたが、主催国の準備の関係で延期となったため、次年度使用額が発生した。2019年度に開催予定のため、参加交通費・宿泊費として使用することを予定している。
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Research Products
(6 results)