2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもの認知プロセスー環境要因を考慮した親・保育者・一般成人の比較
Project/Area Number |
18K02461
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
齋藤 慈子 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (00415572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋弥 和秀 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (20324593)
池田 功毅 中京大学, 心理学部, 助教 (20709240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳幼児顔 / かわいさ認知 / 養育欲求 |
Outline of Annual Research Achievements |
「社会の中の子育て」が理想とされる中、現状は理想からは程遠い。生物学的に考えれば、万人にとって「子ども=かわいい=世話したい」でないのは当然である中、どのような人が、どのような齢の子どもに、どのようにかかわってくれるのかを明らかにすることは、社会の中の子育てを促進するためのシステム構築に重要である。本研究では、生活史戦略の理論に基づき、親、保育者、一般成人を対象に、子どもに対する認知を測定することで、上記問いに答えることを目的としている。 0-2歳の子をもつ母親、教育学部大学生、一般大学生を対象に、乳幼児顔の評定調査を行った。具体的には、新生児期から2歳までの乳幼児の顔に対するかわいさ、養育欲求、接近欲求の評定が、刺激の発達段階によってどのように変化するかを検討した。結果、母親の評定では、かわいさのピークが4-7か月頃にみられるが、養育欲求と接近欲求のその時期のピークは明瞭でなく、かわいさ知覚と養育欲求、接近欲求は必ずしも一致しないことが示唆された。一方、大学生では、教育学部生の評定値が非常に高い傾向がみられたものの、教育学部生、一般学生、いずれにおいても、かわいさ知覚、養育欲求、接近欲求、3評定値で4-7か月にピークがみられ、2者で評定値の刺激の発達的変化に類似した傾向がみられた。 さらに予備的に、0か月および11か月齢児の寝顔の印象に関する調査も行った。大学生、0-6歳の子を持つ親を対象に、写真を見て感じたことを自由記述してもらったところ、大学生と親では親の方が、また親においては子どもとのかかわりが多い方が、かわいいと言及する人の割合が低い傾向がみられた。 これらの結果から、親と大学生で、また親においても子どもとのかかわりによって、乳幼児の顔の認知が異なる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乳幼児顔の評定調査について上記のように進展することができた。さらに寝顔の予備的調査にも着手することができた。またそれらの成果を、かわいさを進化的および文化的視点から討論するべく研究代表者が企画した、日本発達心理学会第30回大会ラウンドテーブル「『かわいい』の進化と文化」において発表し、有益な議論を行うことができた。ラウンドテーブルでの議論は、論文発表に向けて、考察の深化に役立った。 初年度末から次年度にかけて大規模調査を実施する計画であったが、九州大学橋彌准教授、中京大学池田助教との打ち合わせを重ね、次年度での調査実施に向けて準備が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
母親、大学生(教育学部・一般)を対象にした、乳幼児顔の評定調査について、結果を論文としてまとめ、発表する予定である。予備的に行った寝顔に関する調査についても、対象者を広げ、質問項目を整理し、本調査を実施する。また、これまでの調査では、親か大学生か、年齢・性別といった基本的情報と、顔の評定値のみを扱ってきているが、今後は生活史戦略にかかわる変数とそのための具体的質問項目の選定を行い、それらの変数も扱った大規模調査を実施する予定である。親、保育士を対象とした調査のために、九州大学の橋彌和秀准教授、武蔵野大学の箕輪潤子准教授の協力を得て、参加者集めの準備を進める。調査結果に基づき、中京大学の池田助教との連携によりネットワーク分析を用いて、乳幼児の認知や養育欲求に影響を与える要因を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度予算の大部分は、大規模Web調査を実施するためのものである。大規模調査自体は、当初計画では初年度末~次年度初旬を予定していた。本助成金は繰り越しが可能であることを鑑み、念のため初年度で請求していた。そのため、現時点では次年度使用額が余っているように見えるが、当初の計画から大きく遅れたためのものではない。
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Research Products
(1 results)