2019 Fiscal Year Research-status Report
自分の健康と命を守り、自己を成長させ、体と心と社会的な健康の土台を育む就学前教育
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18K02462
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
渡部 かなえ 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (50262358)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子ども / 発育発達 / 幼児教育 / 健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
生涯にわたって自分の命と健康と生活を自分で守る基盤となる力を育むために必要なことを、子どもが育つ恵まれた環境を実現しているスウェーデンの幼児教育カリキュラムの分析と、逆に子どもの健やかな育ちにとって最悪の状況になった東日本大震災から9年が経過した今の被災地の子ども達の状況の分析から検討した。さらに、被災地の子ども達の健康的な発育発達のためにどのような支援が必要とされているのかを、ボランティアの記録から検証した。 研究の結果、スウェーデンでは、たとえ幼児であっても子ども扱いせず、一人の尊重されるべき人格を持った自立したスウェーデン国民であることが期待され、幼児教育もその理念に基づいて行われていた。スウェーデンに比べると日本の幼児教育は情緒的であり、子どもは、優しくて気遣いができるが、自分の意見を述べたりデイスカッションをする力の育成は十分ではなかった。 また東日本大震災の直後は、子どもも親も強い健康不安と、それ以上に将来の不安にさいなまされていた。当時の子ども達は、安心できる場や安全に遊べ生活できる場所、そして恐怖の体験を乗り越えるための心のケアを必要としていた。震災から9年後の子ども達は、被爆の潜在的・長期的な影響、信頼できる情報の欠如、避難先でのいじめと孤立などの心と体の健やかな発育発達に長期に渡って影響を及ぼす問題にさらされていた。そして、そのような子ども達が必要としていた支援は、継続的な健康チェック、信頼できる情報、教師や学校による専門的な支援、安心して受けられるコンサルテーションやカウンセリングであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいるが、新型コロナウイルス感染症拡大による国際的な措置で、成果発表を行う予定であった国際学会に参加できなくなったが、カリキュラムの分析や、スウェーデンでの観察調査とインタビュー調査は2019年10月に実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年7月に成果発表を予定していた国際学会は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止になってしまったため、2020年にオンラインで開催される学会または2021年7月以降に開催される学会での発表に変更する予定である。また、個別に検討していたスウェーデンとニュージーランドと日本の幼児教育カリキュラムの相互の特性の比較と、幼児教育カリキュラムと就学後の学力や社会に出てからの生きる力(格差の下層に転落しない・社会格差が生じない)の関係について検証する。 さらに、大学生と子どもの共育の質的研究データが整ってきたので、解析に取り組む。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、年度末に成果報告のために行く予定であった国際学会への参加のための海外出張が取りやめとなり、また海外の研究者と協力しての現地での調査もしばらく実施できなくなってしまった。それらを感染症の終息を待って行うことにせざるを得なかったので、次年度使用額が生じた。 【使用計画】感染が終息するまでは、オンラインで開催される学会での発表および専門誌への論文投稿で成果報告を行う。また、スウェーデン・ニュージーランドの共同研究者との研究打ち合せやディスカッションはオンライン・ミーティングで行わざるを得ないので、必要なデバイス環境を整備する。次年度使用額は主にこれらの学会参加費、論文投稿に関する費用、オンラインでの研究環境整備費などに使用する計画である。なお、海外での現地調査は、新型コロナ感染症が終息して国内外の関係機関から2020年12月までに許可が下りれば年度末(2021年2月・3月)に行う(海外出張旅費として執行する)が、許可が下りなければ次々年度(2021年度)以降に使用する計画となる。
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