2020 Fiscal Year Research-status Report
保育者の能力とは何か―実践能力獲得過程の多面的研究
Project/Area Number |
18K02466
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
長屋 佐和子 常葉大学, 教育学部, 教授 (30410632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小河 妙子 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (30434517)
鑓水 秀和 中京大学, 心理学部, 講師 (60808674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保育者 / 職業的アイデンティティ / 保育者効力感 / 情動認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,“保育者の能力とは何か”という問題に焦点をあて,保育者の実践能力の獲得過程について検討している。 2018年度の研究では,学生(2名)・保育者(6名),A幼稚園の園児約(総人数約80名)に協力を依頼し,絵本の読み聞かせ場面のビデオ映像を撮影した。2019年度は,保育者の絵本読み聞かせ場面にかかわる要因の抽出を行うため,ベテラン保育者2名に上記のビデオ映像を提示し,内容について自由に討議するよう依頼した。得られた自由回答記録を用いて計量テキスト分析を実施した結果,教育的な意図,保育者の行動・感情,子どもとの信頼関係,子どもの問題行動,絵本を読むときに大切なこと,自然な読み聞かせの6クラスターを抽出している。この分析により,保育者の経験年数によって読み聞かせの特徴が変化し,より複雑化・個別化していく過程が示された。 また,複数人の顔表情の認知についての実験では,あいまいな表情の乳幼児写真の感情の平均を快―不快の9件法で回答するよう実験参加者に求めた。分析の結果,複数の乳幼児に対する表情判断の個人差は判断の正確性に表れる可能性を示唆した。 2020年度は,これらの研究成果を2つの題目(Factors related to the practical abilities of the nursery teachers in the picture book reading / Subjective evaluation of an average of emotion from multiple infant's expressions)にまとめ,国際学会(ICP)での発表エントリーを行った。しかし,新型コロナ感染症拡大により,2021年度に延期となり,Web開催に変更されている。本研究では,1年間研究期間を延長し,保育者の離職に関するWeb調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の当初計画とその進捗状況,及び変更点は以下の通りである。 第一に,当初予定されていたICP(32nd International Congress of Psychology, Prague, Czech Republic)での学会発表については,新型コロナ感染症のため2021年度に延期の上,Web開催に変更となった。 第二に,複数人の顔表情の認知についてのPC上での学習経験が,実際の読み聞かせ場面における成績向上に効力があるかについての検討は,新型コロナ感染症のため閉鎖された実験室内における実験が実施出来ず,計画変更して2021年度に延期となった。 第三に,ベテランと学生の絵本読み聞かせ場面の言語分析,行動分析による比較については4月に再評定を行った。しかし,保育者効力感と実践能力との関係について検討するために実施予定であった,経験年数の異なる保育者を対象とした質問紙調査およびインタビュー調査は実施することができなかった。また同様に,離職減少に寄与する要因を調査するために予定していた,離職者に対するインタビューについても実施できなかった。 上記のように,新型コロナ感染症のため,研究の進行及び研究成果の発表には大幅な遅延が生じたことから,研究期間を1年間延期し,2021年度も継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は下記の通りである。 第一に,新型コロナ感染症の影響により,2020年7月に予定されていた国際学会(ICP)での発表が1年間延期となり,Web開催に変更された。すでに発表エントリーは完了していることから,2021年度はWeb発表を実施する。 第二に, 2020年度に実施予定であった実験を,実行可能な計画に変更して遂行する。複数の顔表情の認知における学習効果の検討については,複数人の乳幼児を対象として,実際の読み聞かせ場面を再現することが難しい。そのため,引き続き,乳幼児写真を用いた調査を行う。複数の乳幼児に対する表情判断の正確性にかかわる要因を乳幼児接触経験などとの関連から検討する。 第三に,これまでの研究成果を基盤として,「保育者の能力とは何か」という課題について総括を行う予定である。昨年度の実施計画では,①経験年数の異なる保育者を対象として質問紙およびインタビュー調査の実施,②離職者に対するインタビューの実施により,離職減少に寄与する要因について検討を行う予定であった。しかし,新型コロナ感染症拡大のため,2021年度に延期されている。2021年度においても新型コロナ感染症の終息が期待できない状況にあることから,研究方法を質問紙及びインタビュー調査からWeb調査に変更する予定である。Web調査により,保育者効力感と実践能力が離職に与える影響について検討を行う。
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Causes of Carryover |
本研究は,“保育者の能力とは何か”との課題について検討を行うことを目的としている。当初,2020年7月に行われる予定であった国際学会が新型コロナ感染症の影響によって1年間延期され,Web開催となったことに伴い,学会参加旅費等が不要となった。また,対面による調査を予定していたインタビュー調査,保育園・幼稚園・こども園での質問紙の配布が困難となった。このため,対面による調査をWeb調査に変更し,当初参加予定であった国際学会参加旅費等をWeb調査費用に充当したいと考えている。上記の理由により,残金1,506,065円を2021年度に使用する予定である。 2021年度の計画では,Web調査により,①経験年数の異なる保育者(離職者を含む)を対象とし,②保育者効力感,情動共感性,職場ソーシャルサポートなどに関する質問紙への回答を求めることによって,③離職減少に寄与する要因について検討を行う予定である。
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Research Products
(2 results)