2021 Fiscal Year Research-status Report
保育者の能力とは何か―実践能力獲得過程の多面的研究
Project/Area Number |
18K02466
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
長屋 佐和子 常葉大学, 教育学部, 教授 (30410632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小河 妙子 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (30434517)
鑓水 秀和 中京大学, 心理学部, 任期制講師 (60808674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育者 / 職業的アイデンティティ / 保育者効力感 / 情動認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,保育者の能力とは何かという問題に焦点をあて,保育者の実践能力の獲得過程について検討を行っている。 過年度の研究では,A幼稚園の園児に協力を依頼し,学生・保育者による絵本の読み聞かせ場面のビデオ映像を撮影した。保育者の絵本読み聞かせ場面にかかわる要因の抽出を行うため,ベテラン保育者2名にビデオ映像を提示し,内容について自由に討議するよう依頼した。得られた自由回答記録を用いて計量テキスト分析を実施した結果,6クラスターを抽出している。この分析により,保育者の経験年数によって読み聞かせの特徴が変化し,より複雑化・個別化していく過程が示された。また,絵本読み聞かせ場面のように複数の乳幼児と情緒的やり取りを要する保育場面において,どのような感情の読み取り能力が必要かを検討した。予備的検討として,日本人成人を対象に,日常場面の乳幼児写真の顔の表情から感情の平均を回答するよう求めた結果,複数人の感情の平均を抽出できることが示唆された。 本年度,これらの研究成果(Factors related to the practical abilities of the nursery teachers in the picture book reading / Subjective evaluation of an average of emotion form multiple infant’s expressions)を国際学会(ICP:32nd International Congress of Psychology)において発表した。また,本年度は保育者を対象とした複数人の顔表情の認知に関する実験及び保育職の離職要因についてインタビュー調査を実施する予定であったが,感染症拡大のためWeb調査に変更した。これらの調査方法変更のため,1年間研究期間を延長する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の当初計画とその進捗状況及び変更点は以下の通りである。 第一に,2020年度に予定されていたICP(32nd International Congress of Psychology)での学会発表については,新型コロナ感染症のため2021年度に延期された。このため2021年度に2つの題目(Factors related to the practical abilities of the nursery teachers in the picture book reading / Subjective evaluation of an average of emotion form multiple infant’s expressions)のWeb発表を行った。 第二に,複数人の顔表情の認知についてのPC上での学習経験が,実際の読み聞かせ場面における成績向上に効力があるかについての検討は,新型コロナ感染症のため閉鎖された実験室内における実験が実施出来ず,Web調査に計画を変更して2021年度に実施した。 第三に,保育者を対象としたインタビュー調査は,新型コロナ感染症拡大のため実施できなかったため,Web調査に変更した。この際,新たにWeb調査会社の選定,研究倫理審査委員会に対する審査申請を行ったことから,調査実施時期が2021年度末となった。Web調査では,保育者による絵本読み聞かせ場面の動画を視聴するよう依頼し,その内容について自由記述を求めた。また,質問紙によって離職に対する意識,保育者効力感等についても回答を求めた。2022年度は,これらの結果をもとに保育者の熟達化と離職との関係性について検討を行う予定である。 上記のように,新型コロナ感染症のため,研究の進行に遅延が生じたことから,研究期間をさらに1年間延期し,2022年度も継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は下記の通りである。 2021年度に実施予定であった実験およびインタビュー調査は,Web調査に計画を変更して2022年3月までに調査を完了している。2022年度は,これらの成果の分析を行うことによって,保育者の熟達化,保育者の効力感,共感性,ソーシャルサポート,バーンアウト等の要因と離職との関係について検討を行う予定である。また,これまでの研究成果を基盤として,「保育者の能力とは何か」という課題について総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は,“保育者の能力とは何か”との課題について検討を行うことを目的として研究を行ってきた。2021年度,新型コロナ感染症の影響により,対面で実施予定であった実験及びインタビュー調査が実施困難となったことから,調査方法をWeb調査に変更した。この際,新たにWeb調査会社の選定,研究倫理審査委員会に対する審査申請を行ったことから,研究期間の延長を申請した。Web調査は2022年3月に完了している。 残金154,697円については,Web調査結果の分析時に使用するPC用記憶媒体,ノート等の筆記具,書籍の購入,及び学会参加のための旅費に使用する予定である。 2022年度は,過年度に得られたデータをもとに,保育者の熟達化,保育者の効力感,共感性,ソーシャルサポート,バーンアウト等の要因と離職との関係について検討を行う。また,これらの結果について,2022年度の日本心理学会において学会発表を行う予定である。
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