2019 Fiscal Year Research-status Report
学童期にがんを発症した子どもの退院後のヘルスケアにおける意思決定と自己形成
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18K02487
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
道信 良子 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (70336410)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小児医療 / 小児がん / 協働意思決定 / エスノグラフィ / インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象者の通っている病院(二施設)、その病院が位置する地域(二地域)、および研究対象者の居住区を調査地として、通院生活の全体を理解するために、外来と地域社会(学校・商店街・神社・通学路など)における参与観察を行った。二つの病院に通院する患者合計6名を対象に、日常の健康や通院に関する思いを引き出すためのヘルス・インタビューを行った。このうち、患者1名の居住区を訪れ、担当教諭に対するインタビューを行った。 世界の小児がん医療では、生存率の高まりを背景として、患者・家族の医療参加や患者の長期的ヘルスケアが課題である。本課題の内容をさらに深めるために、小児医療における患者の意思決定が組織的に推進されているカナダを訪問し、子ども病院およびホスピスを対象に、病棟の参与観察(一日)、医療従事者(緩和ケア医、看護師、作業療法士、チャプレン、チャイルドライフの専門家など)に対するインタビュー調査を実施した。インタビューでは、小児がん患者・家族と共に行う協働意思決定の現場における課題(政策や理念とは異なる現実的課題)を共有した。 調査結果の一部は、日本小児科学会学術集会および米国応用人類学会年次大会で公表した(新型コロナ肺炎の感染拡大により、米国応用人類学会年次大会は開催日直前に中止となったが、採択された抄録はWebで公開された)。日本の医学教育にグローバルな視野をもつ人類学の研究知見を導入する必要性を論じた論文において、本研究から得られた視点(子どもの意思と意思決定)が世界の子どもや若者の健康の推進を考える上で有効であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の予定通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
医療現場において子どもの権利を擁護するために、子ども・家族の意向を配慮して、子ども・家族がより積極的に意思決定に参加する「協働意思決定」は今後世界各国において一層推進されるべきグローバルな課題であることが、これまでの調査で確認された。 しかし、文献調査やカナダでのインタビューで得られた情報によると、小児領域の意思決定にかかわる論文には限りがあり、医療者や親の立場からの論考が多数を占めることが明らかになった。 今後、子どもたちの医療に対する意思形成の特徴や過程を論じる。次年度に向けては「子どもの自己形成」「子どもの社会関係」など、子どもの社会と文化を議論の中心にすえた協働意思決定の方法を考察する。通院期間のインタビュー結果を詳細に分析し、論文の執筆を進める。
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Causes of Carryover |
68,422円 論文の執筆が遅れ、英文校正費が使用できなかった。次年度で論文を完成させて、使用する。
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Research Products
(4 results)