2019 Fiscal Year Research-status Report
戦前の日中両国における保育所の成立と展開に関する比較史研究
Project/Area Number |
18K02491
|
Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
日暮 トモ子 目白大学, 人間学部, 准教授 (70564904)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 保育所 / 幼稚園 / 母親 / 子ども観 / 幼保二元化 / 養育の社会化 / 家庭教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦前の日中両国における保育所の成立と展開にみられる特徴を、近代以降、育児の主たる担い手とされた母親の役割の変容から明らかにすることである。両国はいずれも海外から幼稚園制度を導入し、その一方で、貧民や労働者の子弟のための保育所制度を構築、発展させていった経緯がある。福祉事業としての保育所制度の成立及び展開の過程において、教育事業としての幼稚園制度との相違がどのように論じられ、またその中で、家庭における母親の位置づけがどのように語られていたのかを、比較史の視点から検討するものである。 2019年度は、国内外の就学前保育・教育施設、教育行政機関等を訪問し、史資料の収集を行った。国内では、保育所、幼稚園、養成校等において関係者や専門家から聞き取りを行った。国外では、9月に中国(南京)で南京師範大学、陶行知と関わりの深い南京暁庄学院附属実験小学及び郷村幼児園等を訪問し、戦前の状況ならびに今日の状況について情報収集をすることができた。また、中国大陸の就学前教育・保育施設の発展と密接に関わっている香港の幼児教育関係者を招き、意見交換の場を設けた。さらに、台湾の幼児教育関係者から今日の子育て家庭における母親支援の状況について聞き取りを行うことができた。 2019年度は主に、中国で初めての保育所(託児所)とされる北京香山慈幼院(1920年設立)の位置づけ、保育・教育内容等の分析をすすめた。同施設は孤児が主たる対象だが、家庭で養育できない乳幼児も受け入れ、また、幼稚園、小学校以上の教育施設を付設し、さらに保育者養成も行っていた。福祉施設兼教育施設として、当時の他の就学前施設と異なるかたちで発展していった経緯を整理、確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・2019年度は、前年度に実施できなかった海外での中国での現地調査を行うことを主たる目的にした。年内は当初の予定どおり、保育所、幼稚園、大学(養成校)、図書館といった関係機関の訪問など、国内調査及び国外調査を実施し、史資料収集をすすめた。これら史資料をもとに、中国の保育所成立期の状況を整理、確認することができた。 ・しかし、海外情勢ならびに新型肺炎の影響により、2019年12月及び2020年3月に香港で開催予定であった国際学会が中止となり、研究発表を行うことができなかった。また、2020年2月~3月に計画していた中国での現地調査も実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
・2020年度は、新型肺炎の影響で海外での現地調査が難しいことが予測されるため、現地での協力者に依頼をしながら情報を得るなどして、9月までに海外での保育所関連の史資料収集を完了することを計画している。2020年3月にはすでに、台湾の教育者、行政担当者等とインターネットを通じたオンラインでの聞き取り調査、アンケート調査を実施しており、こうした手段を用いて調査を継続していくことを予定している。 ・日本の戦前の保育所の状況については史資料収集等は行ってきたものの、これまで十分に考察をすすめることができていない。日本の愛育会と中国の戦時児童保育会などといった戦時体制における保育事業の比較を含めた考察をすすめ、研究成果として公表することを計画している。
|
Causes of Carryover |
・次年度使用額が生じた主たる理由として、海外情勢及び新型肺炎の影響により、国際学会での学会発表(2回、香港)ならびに2020年2月~3月に計画していた中国での現地調査が実施できなかったことが挙げられる。 ・2020年度も海外調査が実施できない場合を見越して、インターネットを通じたオンラインでの史資料収集を継続して行っていく。可能となれば、2020年度内に現地調査を2回(9月、翌年2月)、国際学会での報告1回(翌年3月)を計画している。 ・2020年度は最終年度にあたるため、研究成果の発表(論文投稿、学会発表)ならびに報告書の作成に充当する。
|
Remarks |
一見真理子・日暮トモ子2019「中国の幼児教育ガイドライン」(日本保育学会ウェブサイト「世界の保育関連指針・要領の概説」(中国)) http://jsrec.or.jp/?page_id=940
|
Research Products
(5 results)