2021 Fiscal Year Research-status Report
戦前の日中両国における保育所の成立と展開に関する比較史研究
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18K02491
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
日暮 トモ子 日本大学, 文理学部, 准教授 (70564904)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育所 / 幼稚園 / 母親 / 子ども観 / 幼保二元化 / 養育の社会化 / 家庭教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦前の日中両国における保育所の成立と展開にみられる特徴を、近代以降、育児の主たる担い手とされた母親の役割の変容から明らかにすることである。両国はいずれも海外から幼稚園制度を導入し、その一方で、貧民や労働者の子弟のための保育所制度を構築、発展させていった経緯がある。福祉事業としての保育所制度の成立及び展開の過程において、教育事業としての幼稚園制度の展開との相違点や、家庭における母親の役割についての語られ方について、比較史の視点から検討するものである。 2021年度も新型コロナの影響のため現地での資料収集は実施できなかったが、国内外の図書館等のデータベースを用いて資料収集を行い、主に民国期の教育家の著作等を中心に当時の保育事業の展開について分析を進めた。また、戦後中国の保育事業及び福祉事業の政策史の展開や今日の就学前教育・保育の政策動向にも視野を広げ、戦前と戦後の連続性と非連続性に焦点を当てて分析を進めた。さらに、海外(中国)の研究者に対して2021年に公表された「中国児童発展綱要」(2021-2030)や今後公表が予定されている「就学前教育法」など最新の動向について聞き取りを行い、近年の日中両国の就学前教育・保育の政策動向について意見交換を行った。 以上の研究を通じて、戦前中国の保育事業の展開において、福祉的機能とともに教育的機能を併せもちながら発展してきた保育施設の存在、ならびにその施設での育児における母親役割の強調などを確認することができた。それが戦前中国の幼保二元化体制にいかなる影響を与えたのかについての検討は今後の課題となった。また、近年の日中の就学前教育・保育の制度・政策の展開と家庭教育との関係、そこにおける母親に求められている役割についても、両国の家族観やジェンダー意識の類似点や相違点を踏まえた分析が必要であることを再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナの影響で海外調査が十分に実施できなかったことが主たる理由である。インターネットを通じて国内外の図書館等にアクセスし、資料収集を継続的に進めた結果、基礎的な分析を行うことができたが、その成果の公表にまで至っていない。このほか、所属先の変更に伴い、図書館での所蔵資料の確認など、研究体制の整備に時間を要してしまったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで収集した資料の分析を行い、日本との比較の視点から、本研究の総括を行う。その成果については、国内外の学会等で発表や論文として公表することを計画している。合わせて、オンラインでの専門家や関係者からの情報提供や聞き取りを重ねることで、より実証的に検証していくことを予定している。そこから得られた知見をもとに、さらに、今日の政策動向を踏まえながら、戦前期の日中両国の保育所の成立および展開にみられる特徴を、家庭における母親の役割変容を分析軸として考察していく。
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Causes of Carryover |
海外での現地調査のための旅費として計上していたが、新型コロナウィルスの感染拡大状況によって実施できなかったことが主な理由である。 今後はこれまで収集した資料の分析を重点的に行い、その成果を国内外の学会での発表や論文として公表していくことを計画している。その成果をもとに、研究全体の総括として報告書にまとめる予定である。可能であれば、2022年度内に海外での現地調査を実施し、研究成果をまとめることを計画している。
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Research Products
(2 results)