2018 Fiscal Year Research-status Report
災害後の遊びは子どもに何をもたらすのか―「災害遊び」から生まれる文化―
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18K02495
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
安部 芳絵 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (90386574)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地震ごっこ / 津波ごっこ / 災害遊び / 子ども参加 / 子どもの権利 / 子ども支援 / 児童館 / 放課後児童クラブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、災害など非日常における遊びが子どもに何をもたらすのかを実証的に明らかにすることを目的とし、(a)文献調査、(b)遊びの実態調査、(c)支援者調査、(d)結果の公表の4つの枠組みで研究を遂行している。 【具体的内容と意義・重要性】 2018年度は、(a)児童館・学童保育を中心とした遊びの文献調査をもとに(b)遊びの実態調査の質問紙を作成した。実態調査は、被災地域にある472か所の児童館・放課後児童クラブを対象として調査票を配布し、回収率63.6%であった。この回収率の高さは一般財団法人児童健全育成財団および公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの協力によるものである。これを踏まえて、データの集計を行った結果、①支援者は、災害直後に遊び場とくに屋外の遊び場が減少したと感じていること、②災害遊びを目の当たりにした支援者にはゆらぎを感じている者が少なくないこと、③災害全般に対する児童館・放課後児童クラブの取り組みとして、防災キャンプや子どもとの話し合いなど子ども参加緒取り組みが全体的に低いこと、が明らかとなった。(c)支援者調査については、石巻市子どもセンターを中心に実施し、センター職員へのインタビューを実施した。石巻市子どもセンターは2018年度より市直営から指定管理となったため、これまでとの変化も踏まえて調査を行った。(d)結果の公表については、学会発表と論文を発表した。広く研究成果を社会に還元するためには、学会発表や論文発表だけでは不十分だと考えられるため、保護者や教育関係者、児童厚生員や放課後児童クラブ支援員といった専門職を対象とした講演(招待講演)・研修において、積極的に研究成果を発表するよう努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
とくに大きな問題は見受けられない。 (b)災害後の遊びの実態に関する調査は、一般財団法人青少年健全育成推進財団および公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの協力のもと、予想を上回る回収率となった。(c)支援者調査の対象である石巻市子どもセンターは、市直営から指定管理者である「いしのまき子どもセンターコンソーシアム」へ移行となったが、インタビューも特に問題なく実施することができた。 なお、(d)と関連して、本研究のこれまでの成果は、2018年7月に発生した西日本豪雨の被災地域である岡山県倉敷市真備地区における災害後の遊び場づくりに関する評価検証に反映させた。また、子どもと直接かかわる保護者など一般向けおよび学校関係者、児童厚生員や放課後児童支援員など専門職向けの講演において、研究成果を踏まえて講義を行い、広く社会に向けた情報発信に努めるなど、リアルタイムで現場に還元するよう努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
(a)~(c)の研究遂行にあたっては、一般財団法人青少年健全育成推進財団、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、いしのまき子どもセンターコンソーシアムをはじめとした団体や調査協力者の協力を得る。何か課題が生じた場合は、研究協力者(NGO学童アドバイザー:田代光恵公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部プログラムマネージャー、学校教育アドバイザー:三浦玲宮城県公立中学校教諭、文化論アドバイザー:間瀬幸江宮城学院女子大学准教授)との中間検討を実施し、助言を得て適宜、研究の修正をはかる。 (d)研究成果をより広く社会に還元するものとして、学会発表のみならず一般向け・専門職向けの講演会などにおいて積極的にアウトリーチを行うことで研究のインパクトを高めたい。また考えうる課題として、研究実施期間中の大規模災害の発生がある。このような場合は、研究成果を被災地域での子ども支援に直接活かせるよう上記の団体等と連携する。
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Remarks |
【一般・専門職向け講演(招待講演)】 災害と子ども支援―首都直下型地震に向けて子どもたちは何ができるか― 20180719(主催:横須賀市教育委員会)、特別講義2「子どもの参画と児童館活動」(平成30年度中堅児童厚生員等研修会、主催:一般財団法人児童健全育成推進財団、後援:厚生労働省)20181011、 ほか7件
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