2018 Fiscal Year Research-status Report
モザイク型ダウン症候群の予後(細胞遺伝学的解析、臨床、保育・教育・社会適応)
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18K02497
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
高野 貴子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (50236246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダウン症候群 / モザイク / 21トリソミー / 染色体分析 / FISH / 口腔粘膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究に先立ち、東京家政大学倫理審査(板h29-15)と東京都立東部療育センターの倫理問題審査(29守東部セ第256-1)の承認を得た。東京都立東部療育センターの高野の遺伝外来受診時に、患者または保護者の同意を得て、同意書にサインをいただき、採血と口腔粘膜標本作成を行った。 モザイク型ダウン症候群患者5名(男1、女4)の染色体分析を実施した。モザイク割合を調べる目的で、①3日間培養後の染色体Gバンド分析を100細胞分析。②培養細胞のFISH(fluorescence in situ hybridization)解析は21番染色体長腕q22.13-q22.2プローブ(コントロールとして13番染色体長腕q14プローブも使用)を用いて100細胞分析。③口腔粘膜標本のFISHを100細胞分析。④骨髄からの多様な白血球のモザイク割合を調べるために、未培養の採血直後の標本のFISHを100細胞分析。⑤女性1名は抜歯からの繊維芽細胞を培養してFISHを100細胞分析した。 その結果、7歳から23歳までの4名の患者では生後まもなく病院で診断されたモザイク割合(Gバンド分析)と比較して、①、②、④は21トリソミー細胞割合が激減していた。しかし③口腔粘膜細胞と⑤の繊維芽細胞の21トリソミー細胞割合はどの患者も顕著な減少はなく、出生時のモザイク割合と近似していた。ところが、生後11ヶ月の女性患者では、モザイク割合の変化(21トリソミー細胞割合の減少)がなかった。 これらに加えて、標準型ダウン症候群患者5名(男3、女2、19~38歳)の染色体分析(①、②、③)を実施した。①②の結果はほぼ100%の割合で21トリソミーだったが、③口腔粘膜細胞に21トリソミー細胞割合の減少が認められた患者が存在した。今年度は④未培養での採血直後の標本のFISH解析を行わなかったので、次年度に患者の協力を得て実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダウン症候群患者全体の約2%にのみ診断されるモザイク型トリソミー21患者を5名調べることができたのは予想外の成果だった。その結果、うち4名の患者で出生時と比較して、培養細胞と未培養の染色体分析で21トリソミー細胞割合の顕著な減少を認めた。しかし、口腔粘膜細胞と線維芽細胞では減少が認められなかった。このような現象の報告はこれまでになく、重要な結果と考えられる。 また生後11ヶ月の女性患者では、モザイク割合の変化(21トリソミー細胞割合の減少)が培養細胞と未培養の染色体分析を含む①から④全ての染色体分析で顕著ではなかった。7歳の男性患者ではすでに培養細胞と未培養の染色体分析において21トリソミー細胞割合の減少が認められているので、幼児期の早い段階で、末梢血ではモザイク割合の減少が起こっていることが示唆された。このような現象のさらなる追求が次年度以降の課題である。 これとは別に標準型ダウン症候群患者において口腔粘膜細胞で21トリソミー細胞割合の減少の認められた患者が存在した。組織の低頻度モザイクの可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 生後11ヶ月の女性患者では、モザイク割合の変化(21トリソミー細胞割合の減少)が顕著に認められなかった。7歳の男性患者では、それらの分析において21トリソミー細胞割合が激減しているので、減少時期を特定するために11ヶ月の患者の追跡調査が必要である。 2) すでに染色体分析を行った5名のモザイク型ダウン症候群患者の詳細な臨床像、生育歴調査、心理テスト、脳波検査、MRI検査を実施する。 3) すでに培養細胞での染色体分析を行った5名の標準型ダウン症候群患者の採血直後の未培養標本のFISH解析を行う。 4) 遺伝外来を再診されるダウン症候群患者に本研究へのご協力を仰ぎ、さらに検体数を増やして解析する。 5) これらの研究結果の解釈を文献調査とともに検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたテロメア解析は、解析している企業からの情報を検討した結果、解釈の曖昧なデータしか得られないので本研究に益とならないと判断し中止した。そのための経費がかからなかった。残金は次年度に回して、新たな患者検体の染色体検査費用や学会参加費用として使用したい。
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Research Products
(6 results)