2019 Fiscal Year Research-status Report
被虐待児における自己調整学習の困難さに配慮した読み書き支援法の開発
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18K02502
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
後藤 めぐみ (赤塚メグミ) 常葉大学, 保育学部, 講師 (30709217)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 被虐待児 / 漢字の読み書き学習 / 学習方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、児童心理治療施設に在籍する児童7名を対象に、漢字の読み書き指導を行った。その中で、教材特性に基づく学習効果の検討(検討1)と、学習方略の遂行に関する検討(検討2)を行った。 検討1では、使用した学習教材は、プリント教材とパソコン教材の2種類とした。両教材ともに、東京都教育委員会による「読めた」「わかった」「できた」読み書きアセスメントに基づく支援教材(2017)を使用した。プリント教材では、ひらがなや漢字を繰り返し書くことは求めず、漢字の画要素の合成課題や欠損部品の書き足し課題を中心に構成した。パソコン教材では、漢字の画要素の合成課題をマウスによるドラッグ操作を通して実施した。どちらも反復的な書字行為を伴わない点で、学習行動の開始は良好であった。一方、パソコン型教材では、プリント教材よりも画要素の選択においてエラーが多かった。また、マウスのドラッグ操作に不慣れな事例では、課題を中断する様子が見られた。被虐待児は衝動性による行動制御の困難が指摘されており(宮尾,2008)、学習方略の獲得によってパソコン教材への取組が改善することが予想された。学習漢字の習得に関する評価を含め、引き続き検討が必要である。 検討2では、対象児について、漢字の読み書き学習における学習方略の自発的使用について検討した。学習方略の使用に関する評価は、伊藤・新藤(2003)を参考にチェックリストを作成し、対象児と学習支援者の双方により実施した。その結果、課題へのとりかかりが良い場合には、自発的なリハーサルや新奇の学習課題に対して既存の知識を活用する関連づけ方略でポイントが高く、学習準備行動が整わず、課題へのとりかかりが悪い場合には、特に関連づけ方略でポイントが低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、児童心理治療施設に在籍する児童を対象に学習方略の遂行に関する検討を行い、被虐待児の行動特性に配慮した方略の提供と獲得の必要性が示唆された。また、教材特性に基づく学習効果の検討に向けて、課題を明らかにでき、今後の検討課題を整理することができた。 一方、漢字の読み書き学習に関する自己調整学習の評価課題について作成には至ったが、社会情勢の急激な変化のため、予定していた定型発達児の基準値の測定が行えなかった。これは、被虐待児における自己調整学習の特徴を定型発達児との関連から検討する上で重要な調査であるため、2020年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施できなかった定型発達児の読み書き学習における自己調整学習に関する発達的基準値の測定を行う。既に、公立小学校において研究協力は得ているため、調査の早期実施を実現し、2020年度中に分析を終える。 あわせて、パソコン教材においては、エラーレス学習に向けて課題を整理した上で改善を図り、教材特性に基づく漢字の読み書きの学習効果について検討する。
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Causes of Carryover |
読み書き学習に関する自己調整学習について、定型発達児の基準値測定が延期になったため、旅費および通信費等を使用しなかったため差額が生じた。2020年度の調査で使用すると同時に、測定データの入力および分析のためのアルバイト代として使用する。
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