2020 Fiscal Year Research-status Report
医療的ケア児の保育ニーズをいかにして満たすか:実践事例の検討による普及モデル構築
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18K02508
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
鮫島 輝美 京都光華女子大学, 健康科学部, 准教授 (60326303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東村 知子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30432587)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医療的ケア児 / 保育ニーズ / 実践事例の検討 / 普及モデル構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では,東京,名古屋へのフィールドワーク ,インタービューを行い,京都でも医療的ケア児の受け入れが可能な保育園がいくつか開園しており,そこへもフィールドワークを行なって,全体のまとめに入る予定であった.しかし,コロナウイルス の感染拡大による社会情勢により,フィールドワークをほとんど実施することができなかったため,新たなデータを得ることができなかった. これまでのフィールドノートをまとめ,保育実践の特徴について丁寧に検討した.2017年8月から2020年2月までの研究期間に、Aさん(Z園の代表)のインタビューを計10回、スタッフ6名に対してインタビューをそれぞれ1回ずつ、保護者のインタビューを計2回、保育園での参与観察を計4回実施した.インタビューデータは全てテキスト化し,逐語録を作成した.逐語録とフィールドノートの記述をもとにオープン・コーディングを行い,カテゴリーごとにまとめた.表計算ソフト(Microsoft Excel)を用いて,Aさん,看護師,保育士,保護者、観察に分けてコードの一覧表を作成した。インタビューから得られたコードの個数は,Aさん911,保育士223,看護師188,保護者305,観察238で,合計1,865であった。抽出されたカテゴリーは,「Zにおける保育と家庭支援の特徴」,「実践を可能にしている仕組みと道具」,「医療的ケアへの保育士の関与」「看護師が保育園で働くこと」,「スタッフのキャリア」,「リーダーの業務」,「リーダーからみたZ」,「新人スタッフからみたZ」,「チームづくり」,「医療的ケア児の保育が広がるために必要だと思うこと」であった.研究者間で,web会議を何回も行い,研究の方向性について議論した.以上をまとめ,「Z園」が目指そうとしている保育の特徴について,一本の論文とし日本質的心理学会にて投稿・発表するに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前期は,大学での教育体制が大きくオンラインにシフトチェンジするによりことで,かなり現場は混乱し,毎日対応に追われることとなった.後期になれば状況が落ち着き,簡単な調査なら開始可能かと考えていたが,全く落ち着く様子が見えず,計画しては頓挫するということが続いたため,今年度中の調査は難しいと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査内容をふまえ,今年度の方針を以下の二つで考えている. 1)看護師が保育園で働くことを通じて,保育士と看護師が協働する事の意味について考える.データ分析により抽出されたカテゴリーの一つであり,医療的ケア児の集団生活を支えるためにも,専門職の協働が喫緊の課題である.別の保育園の看護師へのインタビューより,医療的ケア児を受け入れたとしても,保育士と看護師が役割を超えて協働するには課題も多いが明らかになっている.協働という視点から,「Z園」の実践がどのような社会的意味があるのかを検討する. 2)医療的ケア児の受け入れを難しくしている社会的心理的障壁について考える.今年度は,計画していたフィールドワーク をできるだけ実施したいと考えているが,社会状況によっては,できない可能性もある.そこで,前半は,ウェブ会議システムを利用して,現在,医療的ケア児を受け入れている施設の代表者にインタビューを試み,医療的ケア児を受け入れるに至った経緯と受け入れ後の状況・問題点・今後の課題について尋ねる.そこから,医療的ケア児の受け入れを難しくしている社会的心理的障壁とはどのようなものか,について検討する 以上から最終的には, 医療的ケア児を支援する活動をより多くの保育現場に広げていくにはどうすればよいかを実践面と社会的・制度的側面の両面から検討し,医療的ケア児の保育の「普及モデル」を提案することを目指す.
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Causes of Carryover |
今年度は,計画したフィールド調査ができず,国内外の学会も中止やオンライン開催となったため,旅費が発生しなかった.また,計画した調査が残っているため,2021年度も引き続き研究を継続することした. 今年度も,調査費と旅費として使用する予定であるが,国際学会が中止となっており,旅費としての使用が難しい可能性もある.
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