2020 Fiscal Year Research-status Report
Action research type mountains disaster prevention education in Nepal
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18K02524
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
榊原 保志 信州大学, 教育学部, 名誉教授 (90273060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 雅一 岡山大学, 教育学研究科, 特命教授 (20177827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地学教育 / 台風 / 自然災害 / 高潮 / ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
ネパールの第9学年の単元「自然災害」では,雪崩,氷河湖決壊洪水,台風(ハリケーン)が取り扱われている.台風について取り組んだ.教科書には台風の原因,台風の影響,台風についての安全な対策などが書かれている.台風による海水面上昇として高潮が取り上げられている.ネパールには海のない内陸国であるが,国内に主要な産業が乏しく,出稼ぎとして多くの若者は日本を含む海外に出かける.そこで出くわす災害の知識や対処法などを身につけておくことは重要なことである. 台風に伴う風が沖から海岸に向かって吹くと,海水は海岸に吹き寄せられて「吹き寄せ効果」と呼ばれる海岸付近の海面の上昇が起こる.また,台風が接近して気圧が低くなると海面が持ち上がる.これを「吸い上げ効果」といい,外洋では気圧が1hPa低いと海面は約1cm上昇する.高潮発生の仕組みはこの二つの効果によるものである. 開発した教材は台風の進行方向に向かって右側と左側とで風向の時間変化が異なる様子を,方位磁針を加工した台風風向モデルを使って,地図上で再現するものである.台風風向モデルを台風の進行方向を描いた台紙の上に置き,磁石のS極(=台風の中心と見なす)を矢印に沿って北上させると,方位磁針のN極が磁石のS極を追いかけるように動き,磁針の動きに連動して磁針に付した風向の矢印が反時計回りに変化する. 台風の予想進路を見て自分が生活する地区に台風が接近する場合,雨や風が強くなることは経験上予想しやすいが,風向の時間変化については予想しにくい.本授業では,台風の進路からみて右半円なのか左半円の場所によって,風速の大きさの違いや風向変化の違いに着目させ,台風の進路からみて右半円に南に開いた湾が高潮被害を受けやすいことを気付くよう指導する授業プログラムを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
台風による高潮災害の教材や指導プログラムの開発は行えたが,それをネパール国で授業実践しその効果を検証することができなかった.その理由は世界的なコロナウイルスの流行により,海外調査ができなかったためである.とりあえず,国内の高等学校で授業実践を計画したが,国内のコロナウイルスの感染拡大のため,国内での検証授業の実施は見合わせざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
世界的にコロナウイルス感染が収まらないと,海外調査はもちろん国内の学校における授業実践も実施できない.年内には日本国内のワクチン接種が多くの人に実施されるようなので,そうなれば国内調査を実施するつもりである.また,ネパールのワクチン接種の状況は日本と同様のようである.状況が改善され国際便が飛ぶようになれば,ネパール国で調査を行い,台風による高潮災害の授業実践を含む調査を実施する予定である.それに併行して,雪山災害の教材開発を行う.このゴールデンウイークにおいて,長野県の八ヶ岳や北アルプスで登山者の事故による死者が発生している.雪崩を含む雪山における災害について検討し,災害の種類,災害の仕組み,対処の仕方,さらには教材開発を実施したい.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの世界的流行のため,ネパール調査の実施ができなかったためである.2021年度に大規模なワクチン接種が予定されている.これにより2021年度後半には日本国内外でコロナウイルスが収まるものと期待される.可能なったならばネパール調査の期間や回数を増やし成果を上げたいと思っている.
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