2018 Fiscal Year Research-status Report
教師教育現場での「対話的身体」の実証、およびその理論化の試み
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18K02531
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柳瀬 陽介 広島大学, 教育学研究科, 教授 (70239820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長嶺 寿宣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20390544)
樫葉 みつ子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20582232)
山本 玲子 京都外国語短期大学, キャリア英語科, 准教授 (60637031)
横田 和子 目白大学, 人間学部, 専任講師 (80434249)
岩坂 泰子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80636449)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対話 / 身体 / 身振り / コミュニケーション / 教師教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究課題は、優れた教師教育者が教師教育の現場で示す「対話的身体」すなわち 「他者に対して独話的(権威的・静態的)な伝達ではない対話的(多声的・動態的)な呼び かけを行っていることを自然に示す身体作法」を実証的に記述し、理論的言語で解明することであり、平成30年度は理論的整理と予備調査を行うことを計画していた。 理論的整理としては、本研究の研究者が一同に集った上で、その知見を一般に公開する「公開研究集会:外国語教師の身体作法―学習者との身体的同調をうながすための実践的工夫―」を7/15(日)に京都外国語大学で開催した。さらに11/17(土)には第36回 JACET SIG 言語教師認知研究会 研究発表会で90分講演を行い、その一部で本研究の理論的支柱の1つとなる「二人称的アプローチ」についての概略を示した。予備的調査としては、11/29(木)に優れた実践者を迎えたワークショップを広島大学で開催し、その実践者の身体作法を観察すると同時にビデオに録画した。これらの知見はその都度ウェブでも公開している(「備考」の欄を参照)。 その結果、理論的には身体作法に関する分類を整理し、その中でも身振りは言語形式の産出と共に(弁証法的に)発生するものであり、両者は発話者の想いに基づいているという論点を明確にした。また、その身振りは聞き手との二人称的関係(互いに強い関心をもった関係)においてこそ自然に発生することも確認した。だが、予備的調査における観察では、『学び合い』と呼ばれるアプローチで学習者に主体的で深い対話を実現させている教師は、いわば「黒子」に徹し、身振りなども控え、学習者の対話の観察に徹していることがわかった。これは予想外のことであり、本研究としては、教師の「対話的身体」を考える上で、授業観を根底的に見直すことを余儀なくされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように三つの企画を行いそれなりに研究は進んでいるが、当初予定していた共有データに基づく研究メンバーそれぞれの観点からの分析がまだ行われていない。これには大きく二つの理由がある。一つは上でも述べたように、『学び合い』における教師の身体作法が、従来型の授業スタイルでの教師の身体作法と大きく異なり、研究メンバー(特に理論的統括を担当する研究代表者)が授業観について理論的な問い直しを迫られたからである。もう一つには、研究代表者が平成30年度に他大学に異動することを決意し、その結果、実際に平成31年度から所属大学を変わることとなったため、仕事の引き継ぎ作業、引っ越し作業などで大幅な時間を取られたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、理論的整理については、授業観の根底的問い直しの準備的な作業は進めているので、それに関する研究成果をまとめ、今年度中に学会発表をし査読付きの学術誌にその成果を公表する予定である。遅れているデータ分析については、まず新たな理論的整理を研究メンバー全員の共通理解とした上で、実践者の身体作法についての実際の分析を始める予定である。しかし、基になる授業観が異なれば、「対話的身体」の評価軸も根本的に異なるため、この理論的理解の共有は丁寧に行わねばならないと考えている。
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Causes of Carryover |
前述したように、研究代表者が所属大学変更に伴う仕事の引き継ぎや引っ越し作業のために研究活動が停滞したため、性急な予算消化は控えることとした。 2019年度においても前半は研究代表者が新しい環境になれるまで時間がかかりそうなので、研究活動は後半にシフトさせたい。
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