2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Histrical Study of Expository Texts in Japanese Textbooks used at Elementary School
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18K02534
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
幾田 伸司 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00320010)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国語教科書 / 説明的文章 / 教材史 / 小学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後期の小学校国語教科書に採録された説明的文章教材の採録史を総括的に記述し、学習者に提示された教育内容の変容過程を明らかにすることを目的としている。 研究に際して、説明的文章教材の概要を一覧化したデータベースを整備し、採録状況の変化、扱われている題材・テーマ、構成、修辞技法等に関する教材の特徴の変遷に焦点を当てて検討を行った。昭和46年度から令和元年度までに採録された説明文教材教材では、「動植物」、特に「昆虫」を扱った理科的題材の教材が最も多く、次いで児童が「くらし」の中で触れる様々な事象を題材にしたものが多い。学年別では、児童の身近にある乗り物が一年生の題材として、伝統文化が三年生で、文化的事物や環境問題を題材とする教材は六年生で採録が多くなっており、学習者の社会的関心の広がりが教材にも反映している。平成半ばから点字や手話など、コミュニケーション手段の題材が採録されるようになった。 さらに、本年度は「ありの行列」を例として科学的説明文教材の指導内容の変容を検討した。「ありの行列」では、題材・表現面で採録当初から評価された一方で、叙述や文章構成の曖昧さに対する批判も見られた。それに対して、仮説を導くための前提条件の提示、語が表す概念の精緻化、段落の再構成など、叙述の曖昧さを解消するような改稿を行うことで、構成が明確な問題解決型の説明的文章の典型性が備えられるようになった。指導に際しては、当初の段落要約から、文章の解釈、構成把握、考えの交流などへ学習活動が転換している。また、この教材は研究成果を報告する科学的説明文と科学者の探究プロセスを叙述する科学読み物の特徴を持っており、多彩な学習活動に対応することもできた。叙述の精選、指導事項の変容、学習活動の多様化に対応できる余地を持つことが長期採録の要因となっており、それらはそれぞれの時期の教育内容にも対応している。
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