2019 Fiscal Year Research-status Report
数学的に考える資質・能力の育成のための算数科授業における振り返り活動に関する研究
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18K02537
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
清水 紀宏 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50284451)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 算数 / 振り返り / 数学的に考える資質・能力 / 変わり方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「算数科の授業において、教師の手立てに応じて子供の振り返り活動が、いつ、どのように生起しているか」「生起した振り返り活動が、数学的に考える資質・能力の育成にどのような影響を及ぼしているか」を明らかにし、算数の授業で望ましい振り返り活動を実現するための指導原理を構築することを目的とする。 令和元年度の研究では、第4学年「変わり方」の授業の終末における子供の振り返り活動の様相を分析した。この単元では、毎時間異なる教材に対して、子供が「表を横に見る見方」や「表を縦に見る見方」を繰り返し働かせながら、与えられた場面の規則性を帰納的に考えたり、その規則が成り立つ理由を演繹的に考えたりしていくものである。そこで、導入の1時間目の授業および続く2時間目の授業における振り返り活動の実態や、子供毎の振り返り活動の特徴(一貫性や変容の有無)について、授業のワークシートの記述を手がかりに分析した。 その結果、「授業で気づいた事実」「法則を見つけるための方法」「統合的な捉え」など「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」に関わる認知的な記述や、「授業の取組に対する自己評価」「授業で扱われた問題に対する信念」「発展的な課題への志向」など「学びに向かう力・人間性等」に関わる情意的な記述が見られた。こうした傾向は、前年の研究において、「割合」の授業を受けた異なる子供の反応でも見られたものであった。これらのことから、授業後に振り返り活動を位置付けることで、子供の資質・能力の一側面を捉えられることが示唆される。また、多くの子供が、異なる教材を扱った2時間のそれぞれの振り返り活動で、一貫した視点からの記述を行っていた。このことから、資質・能力の育成の指導にあたっては、こうした子供の傾向の違いを踏まえた個別指導に加え、クラス全体へのフィードバックなども含めた指導方法を検討する必要性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続き、授業の分析を実施した結果、第4学年「変わり方」の単元における振り返り活動の様相や、資質・能力の育成と振り返り活動の関連の一端が明らかになったことから、おおむね順調に進展している判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度においては、令和元年度までの研究を踏まえ、望ましい振り返り活動を実現するための指導原理を構築する。振り返りを促すタイミング、発問などの指導の具体的内容、振り返りを子供に表現させる方法、振り返り活動を数学的に考える資質・能力の成長につなげる指導の手立てとその評価、単元構成や授業構成のあり方、一単位時間の授業の時間配分のあり方などを勘案し、指導原理を導出する。 なお、研究課題申請時は、この指導原理に基づく実験授業を行い、その有効性や課題を明らかにすることを構想していた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大による学校の休校措置により、学校現場では学習の遅れを取り戻すことが求められているという状況に鑑み、実験授業の実施については柔軟に判断して対応する。
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Causes of Carryover |
資料収集のために、算数教育の実践に関する研究発表会に参加する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、参加予定の研究発表会が開催されなかったため。
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