2021 Fiscal Year Research-status Report
アジア型多文化的シティズンシップ教育の教材開発原理に関する研究
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18K02545
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
坪田 益美 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (20616495)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生 / シティズンシップ教育 / 社会科 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、これまで収集したデータ、資料等について、新たな研究動向から得た知見等を活用しつつ改めて精査し、再検討することで、分析枠組みや分析内容についても再構築するよう試みた。特に、アジア型シティズンシップについて検討する上で、比較対象としているカナダのシティズンシップ教育の、主に歴史教育に焦点を当てて、そのカリキュラム構造の意義について改めて検討した。歴史認識については、韓国・中国をはじめ、東南アジアに至るまで、日本との認識の相違が顕著であり、かつ論争的であるため、多文化共生にとっての最も大きな障壁となる。現在は一つの国家として統合されているカナダにおいても、過去における人種・民族の間の事実認識や歴史解釈の溝はいまだ解消されたとは言えず、彼らの認識の相違は国家の統合において致命的となりうる。それらをどのような学習内容を通して尊重し、主体的に「仲間」として互いを認識させ、かつ尊重できるように教育していくのか、ということについてのカリキュラム構造を明らかにした。 また、2022年1月からカナダのトロントに滞在し、オンタリオ州を中心に、カナダにおけるシティズンシップ教育、政治教育、社会科教育の過去、現在に関する文献、資料、カリキュラムに関する資料、教材となりうる文献、資料、情報の収集を行なった。主に、オンタリオ州の社会科、公民教育に関するカリキュラムに則した、生徒の学習内容を理解するために必要な資料、教材、文献について検索し、学習内容、基礎知識等の情報収集を行うことができた。加えて、海外からカナダに移住あるいは長期滞在している人々の、カナダと母国における政治的状況、市民力、教育、若者の現状などについて比較した印象や考えなどについてインタビューすることで、カナダの魅力、シティズンシップに関する現状と課題等についての考察に参考となる情報を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度もコロナ禍により、引き続き、現地での調査ならびに学校における調査、教員へのインタビュー、授業観察等ができない状況にあったため、文献・資料の分析、論証に研究方法をシフトした関係で、申請当初の予定を遂行することが困難であった。ただし、コロナ禍前の2018年度、2019年度に収集したデータ、資料等の分析ならびに文献研究を遂行することができたため、今後の研究を推進する基礎的な考察はできたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は本研究課題の最終年度となるため、研究成果をまとめる予定である。当初の予定通りに進行することはできなかったものの、今後の研究推進のための基盤となる成果は、予定通り得られたと考えている。 具体的には、カナダにおける多文化共生を推進するシティズンシップ教育ならびに社会科教育のカリキュラムおよび教科書を中心とした教材における学習内容の分析を通して、日本ならびにアジアにおいて参照すべきエッセンスについて論証し、論文として公表できるよう予定している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初の予定通り、現地調査や学会参加、授業観察ならびに現職教員との打ち合わせ等ができなかったため、それらに係る諸経費として確保していた助成金を使用できなかった。より有意義に使用するため、次年度へ繰り越すこととした。
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