2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on creation and utilization of fundamental data of rock garden at elementary and junior high school
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18K02561
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大友 幸子 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40143721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 浩司 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40292403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 岩石園 / 岩石教材 / 火成岩 / 流紋岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年の調査に引き続き,山形市立第三小学校,鈴川小学校の岩石園の調査を行った.また山形市外の学校の岩石園の情報が得られていなかった中,東根市立東根小学校にもあることがわかったので,その予察的調査を行った. 1.山形市立第三小学校では,校門の入り口近くに庭園として整備された一角があり,近くの校舎の壁面に岩石園の岩石配置図や火成岩・堆積岩・変成岩の種類,産地等が記載されたパネルがある.配置図にはそれらの代表的なサンプルの位置が示してあるが,一部消えているところや岩石名の間違っているところがある.静岡県産のスレート以外は県内から調達されており,これまで調査した小中学校と同じ産地の岩類からなることがわかった. 2.鈴川小学校では校庭の一角,樹木の茂るところに庭園型岩石園があり,そこから離れた体育館の壁面に堆積岩・火成岩・変成岩のできる模式図岩石の山地を示す山形県の地図が描かれている.調査中,放課後に鬼ごっこをして遊ぶ児童たちが岩石園の中を走り回っており,憩いの場になっていた.岩石試料は,石巻市産の井内石(裏に寄贈者の名前が刻まれている)を除くと,ほとんどがこれまでの調査と同様県内産の岩石試料である. 3.東根小学校の岩石園は,これまで同様庭園型であるが,大欅を取り囲む柵で近寄ることができないところに岩石が配置されている.予察的な観察では山形市内とは異なる岩石がいくつか見られた.山形盆地北部に分布する凝灰岩と考えられるものもあることが予想された. 4.一昨年度山形大学附属中学校ので行われた岩石園を使った授業の分析を進める中で,観察資料として流紋岩教材について取り上げることが火成岩の観察に有益ではないかという考えに至り,流紋岩教材の選定における考察を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつか小中学校に残されている岩石園を調査した結果,岩石園の試料は県内の特徴的ないくつかの岩石,東北地方の石碑として多用されてきた石巻の井内石等の当時石材店で出回っている岩石などが使われていることがより明らかになった.そして,ほとんどの学校では教材として使うことなく庭園の一部としてあるのみであることも明らかになってきた.そのような現状がわかってきたため,研究の方向性を変えて,岩石園に使われている県内の石材(特に火成岩)をどのように学習に活用できるか,その際に授業ではどのような岩石試料を活用するのがよいかについて考察した. 山形大学附属中学校の岩石教材園を活用して,平成29,30年度1年生の理科「火成岩のつくり」の授業が土門直子教諭により行われ,その授業で生徒がどのように火成岩を観察したのかについて分析した.前時に室内で安山岩,流紋岩,花こう岩試料を観察した後,岩石教材園の岩石を観察し岩石試料を判別した.平成29年度の授業では,生徒は岩石教材園の83試料から判別できた岩石のみを解答した.正答率は花こう岩,安山岩は比較的高く,流紋岩は低かった.片麻岩を流紋岩と誤答している傾向が非常に高いことから,流紋岩は流理構造を手がかりに判断しているのではないかと推定した. 平成30年度の授業では前年度の授業方法の一部を変更した.前時の授業で観察する流紋岩を4種類に増やし,岩石教材園での観察試料を30個指定して観察時間を確保した.その結果流紋岩の正答率が上昇し,片麻岩を流紋岩と誤答する割合は減少,安山岩,花こう岩の正答率も上昇した.片麻岩を流紋岩と誤答する割合は平成28年度の半分ほどに減少したが,まだ多くの生徒は縞状構造を持つものを流紋岩と判別していると考えられる. 以上のように岩石園の試料を授業で活用することによって,火成岩の観察を生徒がどのように行っているかという考察ができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では,県内外のたくさんの学校の岩石園について調査を行い,岩石園の教材としての活用を研究することをめざしていたが,調査・研究を進めるにしたがい,教材活用という岩石園当時の目的で岩石園が残されていることがほとんど見られないということがわかってきた.それは,岩石園が残っているところのみならず,過去に設置されている学校からどんどん失われていることが当時の設置意義が失われていることを物語っているようだった.しかしながら,これまで残っている岩石園からうかがわれることは,当時集められていた岩石試料の数々が,地域にある有名な(著名な)試料であり,各学校で理科室にある現在でも観察試料として使われているものにつながっている. 本研究の推進には,このような岩石試料を授業で活用する際の利点や注意点を明らかにすることがより有益であると考える.現在は,昨年分析した平成29,30年度の附属中学校で行われた授業の分析をさらに進めている.生徒が岩石園の岩石をどのように観察したのかを,昨年度は流紋岩に焦点を当てて分析したが,さらに安山岩や花崗岩についても分析を進め,岩石園と同等の教材を作成し,岩石園のない学校で活用できることを目的として研究を進めている. また,岩石園の調査を通じて,変動帯である日本各地の岩石教材の多様性について2020年3月国際地質学会(インド・デリー)で発表予定であったが,開催が延期(2020年11月)された.岩石園からわかる上記のような考察についても発表していきたい(延期で開催されるかどうか難しい状況だが).
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Causes of Carryover |
2020年3月にインド・デリーで開催予定であったInternational Geological Congressが延期(2020年11月)になり,研究発表のため出張する予定でいたができなくなったため,旅費の支出ができなかった.当面国際会議が開催されるかどうか見通しが立たないが,当初計画していた国際会議における成果発表を行いたいと思うので,出張ができる機会があったら発表する予定でいる.
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Research Products
(4 results)