2019 Fiscal Year Research-status Report
学力を保証する小学校全教科横断的カリキュラム編成原理
Project/Area Number |
18K02581
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
藤田 詠司 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (60219003)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | インドネシア / 小学校 / テーマ的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年カリキュラム準拠の小学校教科書は,全学年について,テーマ的アプローチによって編成されている。第1学年から第3学年までは各学年8テーマ,第4学年から第6学年までは各学年9テーマである。全体としては,自分自身,人間関係,自然の様子,動植物の世話,環境や技術,社会の様子,仕事,歴史にかかわるテーマが,各学年に設定されている。各テーマには,第1学年から第3学年までは4つのサブテーマ,第4学年から第6学年までは3つのサブテーマが設定されている。そして,それぞれのサブテーマには6つの活動が設定されている。これらの活動の内容と相互の関係を分析すると,テーマ的アプローチは,Fogartyの示す10の統合学習モデルのうち,「蜘蛛の巣モデル」に相当することが明らかになった。「蜘蛛の巣モデル」は複数教科を統合するためのテーマ別アプローチであり,一つのトピックテーマにそれぞれの教科を結びつける方法であり,そこに結びついている教科の内容相互の論理的関係は必ずしも求められない。例えば,第6学年のテーマ2「違いの中の統一」のサブテーマ3「団結する」,活動2では,子どもたちは「統一をテーマにしたダンスを計画する」,「非標準単位および標準単位を使用して三角形の角度を測定する」,「新秩序と改革の時代における社会の変化に関する重要な情報を記述する」という3つの学習活動を行い,創造的な態度や愛国心,計画し,測定し,コミュニケーションする能力,ダンスや角度測定,「新秩序と改革」という第2代大統領スハルト時代における社会の変化についての知識を習得する。国家の統一と三角形の測定という,論理的な関係はほぼ皆無の内容が,「統一」というトピックにそれぞれ結び付けられている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリキュラム・教科書分析ほぼ終えた。ジャカルタと北スラウェシの小学校実地調査もほぼ終えた。実地調査した小学校は,ジャカルタ市内にあるSD AL Azhar Pasar Minggu,ジャカルタ郊外にあるSDN Kedung Waringin 05, 北スラウェシ州ビトゥン市にあるSD GMIM 28 Papusungan, SD impres,北ミナハサ郡にあるSD GMIM 1 Kauditan,とSDN Tumaluntungである。大都会,小規模市,郡部にある,大規模校と小規模校を実地調査することができた。それぞれの学校で,6年生を対象に,自己制御,自己効力感,誠実生などの非認知能力に関するアンケート調査を実施した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で国家試験が中止になったため,非認知的能力アンケートの対象とした6年生の国家試験結果が使えなくなり,過去の6年生の国家試験結果のみしか使えなくなった。非認知的能力と国家試験の結果を比較検討し,テーマ学習が総合的な「学力」にどのような効果をもたらしうるのかの検討ができなくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年カリキュラムの概要と2013年カリキュラム準拠教科書の分析結果を論文として公表する。2013年カリキュラムを早期に導入した小学校(SD AL Azhar Pasar Minggu,SD impres,SD GMIM 1 Kauditan,SDN Tumaluntung)について,導入前と導入後の国家試験結果のデータを収集し,テーマ的アプローチの認知的学力形成に関する効果を検証する。また,非認知的能力調査については,国家試験結果との直接的関係を分析することはできないが,非認知的能力調査の結果がその学校の6年生の非認知的能力を代表していると仮定して,過去の国家試験結果に見られる認知的学力との関係を分析する。また,新型コロナウイルス感染拡大の収束状況を見ながら,可能であれば,新年度の6年生を対象に同様の非認知的能力調査を行い,各学校の6年生の非認知的能力の傾向性の確度を高めたい。
|