2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02603
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
西野 真由美 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (40218178)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 徳倫理学 / カリキュラム開発 / 資質・能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学校における道徳教育カリキュラムの内容について、学習指導要領に示された「内容」の見直しと構造化に向け、内容構成の在り方を理論的・実証的に検討し、次期学習指導要領改訂における内容の見直しに必要な基礎資料と理論的根拠に基づく内容構成の選択肢を提供することである。この目的を達成するため、本研究では、三つの視点で課題を遂行している。それぞれの研究実践は以下の通りである。 A.道徳教育カリキュラムの内容構成に関する理論研究・歴史研究:戦前の修身科における内容構成の変遷をまとめた。また、今日の徳倫理学や討議倫理学の理論的動向を文献をもとに分析した。徳倫理学では、徳の育成をスキル学習との対比で捉え、学習理論の成果を生かした徳育による実践知の育成が重視されていることが明かとなった。 B.道徳教育カリキュラムの内容構成に関する国際比較:21世紀型資質・能力の育成を目指して道徳教育改革に取り組んでいるシンガポールやオーストラリアについて、非認知能力の育成に関わる学習を中心に現地研究者への聞き取り調査を実施した。オーストラリア・ヴィクトリア州では、倫理的能力の育成に向けた州独自のカリキュラム開発の内容を分析した。また、シンガポールでは、メンタルヘルスに関わる内容や現代社会の諸問題に関するディスカッションを充実するとともに、情報社会に求められるmindsetの育成を重視したカリキュラム改定を2020年以降に実施予定である。諸外国の道徳教育は、共有価値を位置付けつつ、子どもの現実生活に関わる実践的な問題解決能力の育成を重視する傾向がみられた。 C.学校におけるカリキュラム・マネジメントに関する実践的研究:学習指導要領によらない教育課程を実施している文部科学省指定の研究開発学校で開発された道徳教育に関するカリキュラムを収集、重点的に指導されている内容を抽出し、その傾向を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
徳倫理学や討議倫理学の最新の動向に基づく道徳教育の内容構成の枠組みの検討や国内の先進校におけるカリキュラム開発の事例分析については、当初の予定通り進めている。 諸外国の道徳教育との国際比較については、学会やWeb会議を活用して情報を収集し、OECDが進めるEducation 2030プロジェクトの現在までの成果、オーストラリア、シンガポール、イギリスにおけるカリキュラム改定の動向についての調査を予定通り実施することができた。しかし、この新たなカリキュラム改定に関わって、シンガポールの新年度開始(2020年1月)以降の取組を調査する目的で、シンガポール文部省のカリキュラム開発担当者へのインタビュー、教師への研修の取材、学校における取組に関する教師への聞き取りと授業参観を実施する予定であったが、コロナ禍の影響で計画を変更しなければならなかった。そのため、国際比較研究に必要な情報収集については、やや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
道徳教育の内容構成に関して、理論的基盤の一つとなる徳倫理学の研究動向を踏まえた枠組みの構築については、昨年度までの成果をもとに、精緻化を進める。 この枠組みと国内における先進校や研究開発学校の実践の分析から得られた動向を照合して、道徳教育の内容構成に関する各学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方を検討し、論文に取りまとめる。 国際比較研究については、今後の世界情勢から、シンガポール、オーストラリア、イギリスへの取材が困難なこと、また、成果を発表しレビューを受ける予定であった国際学会の開催が未定となったことから、方針を見直している。調査対象国への直接取材に代えて、カリキュラム開発担当者や教師らへのWebインタビューを実施、また、諸外国の研究者との連携についても、Web会議を複数回開催して、研究成果に関する意見交換を積極的に行い、レビューを受けることとする。これに伴って、PC環境については、Web会議に必要な整備を行う。
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Causes of Carryover |
令和2(2020)年2月下旬にシンガポールの人格・市民性教育の授業視察および2021年1月以降の新学期に導入が予定されている新カリキュラムの開発動向について取材する予定であったが、新型コロナウィルスの発生により、外国出張が困難となった。また、現在使用しているPC(Windows 7)のアップデート終了に伴い、作業用のPCを1月に発注したところ、中国における新型コロナウィルスの流行の影響による部品調達不調により、見積不可となったため、購入ができなかった。 シンガポールへの調査は、引き続き可能性を検討するが、今後の情勢が不透明であるため、Web会議によるインタビューを実施することを検討しており、Web会議に必要な環境整備を行う。PCの購入は、見積が可能となり次第発注を行う。
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