2020 Fiscal Year Research-status Report
視点「図の変数性・定数性」による中学校図形の論証指導法のモデル化
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18K02614
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Research Institution | Shikoku Gakuin University |
Principal Investigator |
風間 喜美江 四国学院大学, 文学部, 教授 (00552374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 是浩 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (00030479)
佐竹 郁夫 香川大学, 教育学部, 教授 (80243161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 図形の論証指導 / 図の変数性・定数性 / 順序思考・俯瞰思考 / 証明 / 指導法のモデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,図形論証指導上の教師の問題点を克服し,新しい指導法提案とそのモデル化を行い,図形論証指導法の確立を目的とし①~④を行うことにある。①関数指導法と大局的視点「順序思考・俯瞰思考」の考察から図形証明指導法を見出す。②図形命題で使われる図の「変数性・定数性」の視点を導入した証明の教材開発を行う。③見出した指導法と開発教材で授業研究を行い,実証的にそれらの有効性を明らかにする。④開発した指導法の妥当性から図形論証指導法のモデル化を行う。 令和2年度は上記③,④を中心に,次の1)~3)を進めた。1)開発教材の実践に向けた指導計画・指導案の作成 2)開発教材を使い実践授業の実施 3)実験授業の評価法を開発し,授業前後の生徒実態を明らかに教材開発の妥当性を示す。 1)では,中高一貫テーマ「軌跡」に関する教材で,実践をする教師との教材理解・意見交換もあった。授業課題は,授業で「証明を考えよう」という課題ではなく,「おや?なぜ?予想できそう?」という言葉が生徒から出てくる課題意識を持たせることがポイントであることを協議した。そのために情報端末の活用等の工夫も盛り込み計画を作成した。2)では,関係者(公立中教師)の協力を得,中3で実践授業を行うことができた。3)では,授業観察,授業記録からの分析をすることができた。生徒は興味を示し反応もよく,指導教師の問題意識も筆者らと共通なものがあった。開発課題についてはその妥当性を探ることができると考えた。しかしながら,図形の論証の本質的な「軌跡は何を根拠にどう説明すべきか」という生徒の問いや迷いが感じられ,論証上の真の立脚点を追究すること必要性に直面した。生徒の思考と指導工夫の両方を中心に置くことが重要であることが判明した。本来,その追究の研究に入るための,生徒の面接や実践授業者・研究分担者との研究協議が必要だが,深められない部分もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
【研究実績の概要】に示した研究目的に対し,研究計画①~④を立てた。 ①先行研究の考察。関数指導法の考察から図形論証指導法を見出す研究,実態調査・分析。 ②教材開発(情報端末の活用を含む) ③指導実践 ④教材開発・指導法の妥当性と論証指導法のモデル化 令和2年度は③,④の実施予定であった。この実施は,それらの内容が示す通り,指導実践授業前後の生徒の実態を評価しながら教材開発・指導実践の妥当性を追究するものであった。授業前の指導授業者との協議・交流を行い,実践を行うことができた。しかしながら,コロナ禍の問題により,指導前後の生徒の実態を調査したり,指導後の指導授業の教師との研究協議等を十分に行うことができなかった。ある時期は授業実施校に入ることも遠慮せざるを得ない状況もあった。また,研究深化のための先行研究図書を探す上でも図書館への入館もままならないこともあった。それにより,研究は中途の段階に留まってしまった。また,実践授業を受けた論証指導法のモデル化を果たすための,指導法の改善を図る指導案の再検討や指導評価の再検討が必要であった。それらがコロナ禍の問題で十分進まなかった。本研究のゴール的な目標の「図形論証指導のモデル化」は,実践授業により,教師が「命題の意味と生徒の既習内容の関係をどれだけ意識できるか」(俯瞰思考)と「いきなり証明せよと言わず,どれだけ命題(条件)に添ういくつもの図を意識できるか」(順序思考)にかかっていることを再認識できたが,細部に踏み込む指導の重点や指導法のモデル化に向けた追究は今後の課題となる。したがって,今年度の研究目標は半分程度しか進まなかった。今後のそれらの追究を継続したい。成果は,別欄の雑誌論文,学会発表欄に示した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までの研究を受けて,今後の研究課題は次のア~ウが重点となる。ア.令和2年までの実践授業の評価を行う。 イ.さらなる実践をめざし指導法と開発教材を行う。 ウ.ア,イを踏まえた図形論証指導法のモデル化を提案する。 アについては,これまでの授業記録や生徒の反応について,考察・協議を重ね実践授業の有効性や課題を明らかにする。アの視点として,「順序思考・俯瞰思考」,「図の変数性・定数性」を視点とし,それらを統合的に捉えることで推進していきたい。この視点に立った深い考察・協議をする。イについては,これまでの教材開発の視点が新たな開発教材に適用できるかを検討しながら指導法・教材開発を試みたい。開発教材が,現場に役に立つ,中2から中3への論証の段階や質の違いを明らかにし,中から高への段階も考察し中高一貫した視点に高める教材開発を試みたい。ウについては,ア,イで培った研究を深め,図形論証指導に対する生徒の意識・反応の分析・考察を行い,図形論証指導の生徒の思考過程を明らかにする。そして,図形論証指導法のモデル化に繋げる。ア,イ,ウはこれまでと同様に一貫した次の視点で行う。 ・学習指導要領と教科書等の図形論証の具体的な課題と論理の質の違いを追究する。・「順序思考・俯瞰思考」「図の変数性・定数性」の概念から教材を分析する。・図と言葉の関係,効果的な言語活動も,教材開発の素地的な視点とする。 本研究のゴールとなる目標の「図形論証指導のモデル化」の実現を上記の追究により達成したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で,研究計画の授業実践前後の生徒の実態を調査するための進まなかった。また,現場の先生方との研究協議の会議が思うように重ねられなかったり,研究分担者との研究協議も進まなかった。そのため,旅費を中心に次年度に持ち越すことになった。
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Research Products
(3 results)