2021 Fiscal Year Research-status Report
Innovation of Citizenship Education Based on the Integration of Character Education and Political Education from the Viewpoint of Meta-Learning
Project/Area Number |
18K02617
|
Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
水山 光春 京都橘大学, 発達教育学部, 教授 (80303923)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 功太郎 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00270265)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | シティズンシップ教育 / 政治教育 / 品格教育 / メタ学習 / メタ認知 / 市民教育 / 道徳教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は,Center for Curriculum Redesign(CCR)の「教育の第4の次元」としてのMeta-Learning(メタ学び)に着目し,政治教育と品格教育の両者を包含・統合するより大きなシティズンシップ教育像を示すとともに,それをもとにした具体的な授業モデルを開発することにある。 「教育の4つの次元」(知識,スキル,人間性,メタ学び)は,中教審答申や新学習指導要領においては,資質・能力の3つの柱(「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」)にまとめられたが,児童・生徒指導要録においては「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」,及び「感性,思いやりなど」の4つの観点に分解され,前三者は評定の,後者の「感性,思いやりなど」は個人内評価の対象となるなど,その扱いは複雑である。そこで本年度は,理論研究とカリキュラム開発をつなぐ鍵となる「教育の4つの次元」の構造について再検討した。 その結果,模式的には,3次元の知識,スキル,人間性で構成された学力の立方体が「メタ学び」の球で覆われ,その球と立方体の隙間を「メタ認知」と「成長型思考」が埋めている,換言すると,メタ認知と成長型思考で充たされたメタ学びの空間に浮かぶ立方体の塊が,知識,スキル,人間性であると捉えられることが示された。 すなわち,平面的な学力構造観では,知識,スキル,人間性,メタ認知の4つの要素が同一平面上にある(だからこそまとめられる)ように見えるが,実際にはこれらの要素は立体的な関係にあり,すべてが「メタ学び」,すなわちメタ認知と成長型思考とかかわりを持っているのである。このことは観点を変えると,「教育の4つの次元」を無理矢理,資質・能力の3つの柱にまとめることには意味がなく,メタ学びは他の3つの次元のすべてに働くことを意味している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究は,理論・開発・実践・評価の4つのステージを組み合わせて行こととしている。1)「理論」研究においては,シティズンシップ教育における政治教育と品格教育の内容や教科との関わりを,知識やスキルや価値観等の観点から整理する。2)「開発」研究においては,理論研究の成果をもとに,海外の先進事例調査等を踏まえ,社会科関連教科・主題のもとでの実施を視野に入れた教材・学習プログラムを開発する。3)「実践」研究においては,開発した教材・学習プログラムを,附属学校教員の主導のもとに試行する。4)「評価」研究においては,3)の試行結果をもとに教材・プログラムを評価・改善し発信する。 ちなみにこれまで,1)については,価値の性質と認識の対象を軸としたシティズンシップ教育アプローチの分類,「参加・責任」と「批判・公正」を鍵概念とした市民像の整理,目標としての市民像と発達段階(小・中・高・大,成人)の関係の整理を行い,これらの成果については,その一部を学術雑誌(「シティズンシップ研究」)に論文として発表した。また,1)と2)に関わって,政治教育と品格教育を統合する「メタ学び」のあり方について検討し,「メタ学び」は教育の4つの次元の残る3つの次元(知識,スキル,人間性)のすべてに関わっていることを明らかにした。 以上により,具体的な授業モデル作成にほぼ見通しをつけることができたが,開発研究において予定していた,主題としてのグローバル・シティズンシップに関する資料収集のための海外事例調査,及び国内附属学校等での学習プログラムの開発,試行が,COVID-19蔓延防止のための海外渡航制限,並びに国内小中高等学校における入校禁止措置等によって実施できなかった。また,上記3)の実践研究が未達成になることで,予算面でもかなりの未消化額を残すこととなった。以上により,進捗状況について 「遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は,1)政治教育と品格教育を統合した理論モデルの確定,2)政治教育と品格教育を結びつけた国内外の先進教育事例との比較を通した本研究の意味づけ,3)理論モデルにもとづく授業モデルの提示とその実践的検討を行い,本研究を完成させる予定である。 1)政治教育と品格教育を統合した新しい教育モデルの確定: これまでの研究において,価値の性質と認識の対象を軸としたシティズンシップ教育アプローチの分類,「参加・責任」と「批判・公正」を鍵概念とした市民像の整理,目標としての市民像と発達段階(小・中・高・大,成人)の関係の整理,及び,知識・スキル・人間性を包含するメタ学びの構造の検討等を行ってきたので,今年度はこれらの研究を総合し,政治教育と品格教育を統合した新しい教育モデルとして確定する。 2)政治教育と道徳教育を結びつけた国内外の実践事例の調査: ナショナル・アイデンティティとグローバル・シティズンシップ,道徳的リベラリズムと政治的リアリズム,インディビジュアリズムとパターナリズムの関係がシティズンシップ教育の中でどのように捉えられているかを,国内外において調査する。 3)理論モデルにもとづく授業モデルの提示とその実践的検討: 1)の理論モデルと2)の事例検討にもとづく授業モデルを作成し,その有効性を検証するとともに,一連の研究成果を関連学会等において発表する。
|
Causes of Carryover |
研究代表者,分担者,研究協力者全員参加による,海外事例調査(実施場所:香港,海外研究協力者:香港教育大学 荘璟珉博士)を予定していたが,COVID-19感染防止対策としての両国・地域政府の指示により,両国・地域間の入出国が停止されたので実施できなくなったことで,旅費及び物品費(海外現地資料購入)に未使用額が生じた。次年度には,速やかに海外調査を再開するとともに,これまでの研究成果の一部を国内外の学会等で発表する予定でいる。
|
Research Products
(4 results)