2019 Fiscal Year Research-status Report
幼小接続期の音楽教育を担う教師養成プログラムの国際比較研究
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18K02638
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
尾見 敦子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (20185672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 昌文 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (30177141)
蓮見 元子 川村学園女子大学, 文学部, 非常勤講師 (60156304)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 幼小接続 / 音楽教育 / 教師養成 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度にフィンランドとエストニアを訪問して収集した資料の整理を行い、特色ある事例として、フィンランドの専門家による子どもの音楽指導の2つの事例に着目し研究発表を行った。一つは、40年以上の歴史を持つコダーイの教育法に基づく子どものヴァイオリン教授法であるColourstrings、および、教師がオンラインでこのメソッドを学べるInternational Minifiddlers、もう一つは ヘルシンキ音楽学校のmusic play schoolにおける乳児から幼児のための音楽遊びの指導である。 尾見は、日本の伝統音楽の学習法である唱歌が、広義のソルフェージュとして普遍的な価値を持つことを、国際学会においてワークショップ形式で発表し、国内学会では、子どもの自律的な音楽活動において読譜が果たす役割について発表した。 小川は、音楽教育のカリキュラムの国際比較、及び移動ド唱法についてのアジアを中心とする国際比較を中心に行なった。9月に開催されたISME Legacy Conferenceでは、招待講演として発表し、政治制度やカリキュラムの国による違いを超えて普遍的な理念を追求した。また7月から10月にかけて行なった一連の発表では、移動ド唱法の各国の実践状況を把握するとともにそれぞれが抱える問題点について論じた。 蓮見は、今日、わが国では乳幼児保育の需要が増し、保育の現場が逼迫している状況を明らかにするために、保育士等を対象に困り感についての自由記述式のアンケートと、保育士等200名と1~5歳までの乳幼児を持つ母親410名を対象とする、全国規模のWEB調査を行った。そして、母親、保育士等に育児・保育における困り感と保育現場での音楽の活用に関する調査結果と合わせて報告書にまとめた。今年度末には、小学生の音楽関係の習い事や音楽科の教科書の家庭での活用に関するWEB調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、初年度の海外調査において収集した研究資料の整理を行った。そして、音楽のもつ様々な教育力を幼小接続期の子どもの発達の諸側面に及ぼす音楽指導の好例に焦点を当ててその分析を行った(尾見:国内学会発表)。フィンランドのColourstringsは、子どもの心身の発達をふまえ、好奇心や知的・音楽的関心を引き出すよく考えられた教授法と教材の集成を長年にわたって創出する一方で、教師を養成し継続的に研修を行う仕組み(International Minifiddlers)を開発している。最終年度にも継続してより全体像を明らかにしていきたい。ヘルシンキ音楽学校のmusic play schoolにおける乳児から幼児のための音楽遊びの指導は、子どもの音楽指導のクオリティーの向上に、教師の総意と豊かな表現力、活動の構成法等が関わっていることが明確に示しており、熟達した教師を輩出するための教員養成のカリキュラムの調査や、カリキュラムに基づく実際の授業の参観およびインタビュー調査を対応させることが必要である。これを最終年度に行うという課題を残している。 今年度は、海外の動向を踏まえて我が国の状況をとらえる視点をさらに広げることができた。カリキュラムの国際比較を通して幼・初等・中等までを一貫して捉えて音楽教育を考えている国と、そうでない国の違いがあることや、中心問題の一つに唱法問題、「移動ド唱法」があることが分った(小川:国際学会、国内学会発表)。海外調査を通して日本の子どもたちとの学校・学校外の音楽経験の違いも浮かび上がってきた。我が国における乳幼児期の音楽的経験に関する調査の分析・報告(蓮見:論文発表)に引き続き、児童期における音楽関係の習い事や学校での音楽教育の家庭での展開についてのWEB調査を行い、最終年度に幼小接続期の音楽教育を担う教員養成のあり方についての提言に活かすようにしたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまで収集した、諸外国における幼小接続期の音楽教育を担う教師養成プログラムの現地調査資料をもとに、研究結果のまとめと公表を行う。 最終年度に予定していた海外での現地調査は行えないため、オンラインで行う方向を探る。コロナ禍の下で、対面に代わって、オンラインで家庭に向けた子どもの音楽活動や子どもの音楽教育に関わる教師に対する研修プログラムが配信されている。本研究テーマに関わる、諸外国における幼小接続期の音楽教育とそれを担う教師養成プログラムについて追加の調査を行うこととしたい。 報告書の構成は以下を予定している。①就学前と義務教育のナショナルカリキュラム ②教師養成のカリキュラム ③ミュージシャンシップ、発達の理解、教材と教授法の観点からみた教師養成の授業、以上の比較検討結果をまとめ、我が国の幼小接続期の音楽教育を担う教員養成の今後の在り方に関する提案を加えることとしたい。
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Causes of Carryover |
フィンランドの乳幼児の音楽教育の専門教師養成のカリキュラムの調査と、カリキュラムに基づく授業の参観およびインタビュー調査を本年度に行うことを予定していたが、実施する期間が取れず最終年度に行うことにした。最終年度の海外調査は行うことができない状況を考慮し、収集した資料と参観した授業の映像資料の翻訳の謝金等に使用したい。
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