2023 Fiscal Year Annual Research Report
Actul Condition Survay on Music Education practice for Movable and Fix Do
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18K02641
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
水戸 博道 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60219681)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 階名 / 絶対音感 / 移動ド / 固定ド / 音楽教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
音高知覚に関する先行研究では、絶対音感保有者は移動ドによる歌唱が難しかったり、移調楽器の読譜で混乱してしまうという報告がいくつか見られるが、こうした混乱の原因の一つに、固定化された音高の言語的符号化があると考えられる。しかし、これまでの研究では、絶対音感を保有している者が言語的符号化を流動的に運用することが本当にできないのかや、言語的符号化をしないで音高を聞くことができないのかについては、実証的に検討した研究は少ない。本研究では、絶対音感保有者の音高の符号化がどこまで固定化されたものであるのかについて検討するために、ピアノと移調楽器の学習経験のある参加者に対して、 2種類の絶対音感テストを実施した。 絶対音感テストでは、5オクターブの音域から60の音高がランダムに提示され、参加者は回答シートに音名を記入することが求められた。この絶対音感テストは、ピアノの音色(以下、ピアノ音源テスト)とクラリネットの音色(以下、クラリネット音源テスト)の2種類が用意され、参加者は、まず、ピアノ音源テストとクラリネット音源テストを1回ずつ回答した。その後、ピアノ曲の楽譜を見ながらピアノを演奏した後にピアノ音源テストを再度回答し、その次にクラリネットの楽譜を見ながらクラリネットを演奏した後にクラリネット音源テストを回答した。分析の結果、参加者は、テストの実音よりも長2度上の音名を回答する傾向があり、これは、クラリネットが実音よりも長2度高く記された楽譜を使用することが影響していることが示唆された。また、今回実験に参加した参加者はクラリネットを学習する前にピアノを学習しており、一度身に付いた絶対音感が、移調楽器のクラリネットを学習することによって不正確になっていった可能性も伺えた。これらの結果は、一度身についた絶対音感も、その後の経験によって変わっていく可能性があることが示唆された。
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