2019 Fiscal Year Research-status Report
新時代に対応した戦後史学習のプログラム開発―世代間断絶と東アジアの視座から―
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18K02649
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 准教授 (50574331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 准教授 (10566003)
山口 公一 追手門学院大学, 経済学部, 教授 (20447585)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 戦後史 / 生存 / 東アジア / 新自由主義 / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は戦後史学習の内容構成に焦点をあて、既存の歴史教科書の到達点と課題を探り、課題を克服する代替的な内容構成のあり方を検討した。 歴史教科書の戦後史叙述は、第1に国際関係や安全保障政策、経済政策など国家を主語にした社会システムに関する叙述が多く、そのままの形では子どもたちの関心を刺激することが難しい。第2に、世界史的視野が重視されているものの、対米関係に大きな比重を割いており、東アジアに対する関心は低調な水準にある。第3に、現代的課題を意識した内容構成が制限されているため、「現在と過去」を往還するようなアプローチが採りにくい。これら諸点を課題として析出し、代替的な内容構成のあり方を検討した。 第1の論点については、国家を基軸とした社会システムと関りを持たせる形で、人々の経験的な要素を組み入れることの必要性を確認した。それを通して、学習者の生活経験とリンクさせながら歴史に向き合わせることを期待したい。第2の論点については、戦後日本の「平和と繁栄」が東アジアの人々の犠牲の上に成立してきたことを示す内容領域や、過去の戦争・植民地責任をめぐる遺恨を継続させてきたことに向き合う内容領域の必要性を確認した。第3の論点については、「現在を新しい視点で捉えられるか」という視点から教材研究を進める必要性を確認した。 内容編成の基本的な方向性を以上のように設定したうえで、それを具体化する主題として「夜間中学校」と「創氏改名」、「済州4・3事件」を取り上げ、基礎調査を進めた。夜間中学校については、小瑶・山口が2020年2月に大阪にて現地調査を行い、資料収集を進めた。創氏改名については、國分が学校史の収集・分析を進め、関連学会にて報告した。済州島4・3事件については、3月上旬に研究代表者と分担者、協力者が合同で現地調査を実施する予定であったが、コロナウィルスをめぐる社会情勢を受けて中止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、①中高生の生活経験・歴史意識と断絶した戦後史学習を改善すること、②東アジアに開かれた戦後史学習の構想すること、という二つの焦点を設定して研究を進めてきた。このうち、①については、ある程度の方向性を得ており、研究活動は順調に推移している。他方、②については、「済州島4・3事件」に焦点を定めたものの、コロナウィルスの影響によって現地調査が実施できなかった。そのため、資料・情報の収集とそれを基にした協議が出来ていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究活動の中心は、戦後史学習の具体的な学習プログラムを開発することにある。その具体的な題材としては、「夜間中学校」と「済州島4・3事件」を想定している。このうち、夜間中学校については現地調査と基本資料の収集は終えているため、直ちに教材化・授業化を進めていく。他方、済州島4・3事件については、コロナウィルスの収束状況を踏まえながら、適切な時期に現地調査を実施したいと考えている。現在のところ、8月~9月を考えているが、実施困難な場合は調査は断念し、夜間中学校に一本化して検討を進める。 なお、当初の予定では研究会を通じて研究分担者・研究協力者と協議しながら研究活動を推進する予定であったが、現在は国内移動も制限されている状況にある。「緊急事態」が解除され次第、研究会再開の可能性を探っていくが、それまでの間は密に連携を取り、課題意識や今後の方向性などについて認識の共有化を図っていく。現在のところ、東京・大阪・青森のいずれかを会場にして、2回の研究会を開催する予定であるが、会場地は変更することも考えている。
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Causes of Carryover |
2020年3月上旬に計画していた韓国・済州島での共同現地調査が中止となったため、その分の繰越金が生じた。コロナウィルスが収束次第、再度、現地調査を計画・実施する予定である。
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Research Products
(5 results)