2022 Fiscal Year Research-status Report
大正・昭和期の女性音楽教育者に関する研究―増子としと小林つや江に着目して―
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18K02678
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
松本 晴子 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (50453353)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 『教育研究』 / 唱歌・歌唱指導 / 児童の主体性の尊重 / 児童の実態にそった指導法の工夫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、女性音楽教育者小林つや江の継続研究の成果を宮城学院女子大学発刊の『発達科学研究』に投稿した。概要は下記のとおりである。
小林つや江(以下つや江)は東京教育大学附属小学校(以下附属小)に勤務していた時代、附属小発行の『教育研究』に精力的に論考などを投稿している。そこでつや江の論文、実践記録、随筆などをすべてを収集し整理を行った。その結果、つや江の掲載論考などは118稿あることが明らかとなった。 118稿について検討を行ったところ、つや江が音楽指導において特に着目していたのは歌唱指導、リズム指導、読譜指導であったことが示された。その背景について、次の2点をあげた。第1につや江は音楽教育の基本は歌唱であると考えていたことである。これはつや江自身が論考の中で明確に述べていることから確認された。第2につや江自身の学びと音楽教育の時代背景である。つや江が小学校に入学し女学校を卒業するまでの時期が1907(明治40)年2月の小学校令の大改革によって「唱歌科」が必修科目となった時期とかさなっており、1941(昭和16)年までこの「唱歌科」が継続されていた。このような音楽教育の歴史的背景によって音楽教育は唱歌教育という考え方が大勢を占めていたことが影響していると推察した。 さらにつや江が大切に考えていた歌唱指導にあたっての留意点として次の3点に整理した。第1に児童が興味を持って自ら楽しく歌い音楽活動に参加できる授業を展開すること、第2に指導者は学年に対応した教材研究を丁寧に行い自身の音楽技能の向上に努めること、第3にクラスにあった指導法を開発していくことである。全体をとおして、児童の主体性、興味関心を基本に据えた教材の準備と指導者自身の技能と指導法のスキルアップの大切さが改めて示されたことを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は2022年度で本研究の全体像をまとめ報告書を作成する予定であったが、コロナ過の影響で達成できなかった。1年1年はやれるべきことをやれる範囲で行ってきたつもりであるが、小林つや江研究の方は全体像にせまるにはやはり調査研究の範囲が限定的であり、総括するまでは至らなかった。このことから、延長をお認めいただくことが叶い幸いである。 増子とし、小林つや江2人の考察をとおして、大正・昭和期に奮闘した女性音楽教育者について掘り下げていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長をお認めいただいたことから、本研究の最終年度となる2023年度は、5年間の研究成果を報告書としてまとめるよう取り組む。 総括にあたっては、増子とし、小林つや江の①それぞれの音楽教育の指導観、②子ども観(児童観)、③2人の音楽教育観の共通点、④大正・昭和期の時代的背景をふまえた音楽教育の状況などを総合的に考察し、現在の音楽教育に流用できること、時代が変わっても変わらない指導の根本理念を丁寧にまとめていくようにする。
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Causes of Carryover |
5年間の研究の総括として、報告書を作成し冊子として発刊する費用と文具費、カリキュラム学会費などに使用する。
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