2018 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study on educational and learning environments to enhance student engagement
Project/Area Number |
18K02703
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 剛史 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 准教授 (40379029)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝上 慎一 桐蔭横浜大学, 法学研究科, 特任教授 (00283656)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 学生エンゲージメント / 学校から社会へのトランジション / 学びと成長 / エージェンシー / ウェルビーイング / アイデンティティ / 自立 / 教授・学習環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題1「国外の学生エンゲージメントに関する研究を網羅的にレビューし、その特徴を整理する」について、学生エンゲージメントは、生徒・学生の学びと成長に関わる様々な理論・概念と関連し合うメタ構成体であることから、より広範な視点から文献を収集・分析し、その特徴を概観した。直接的に学生エンゲージメントを扱う研究はもとより、社会人のワークエンゲージメントに関する研究、学校から社会への移行(トランジション)に関する研究、OECDのプロジェクトの中でも位置づけられているエージェンシーに関する研究、ウェルビーイングやアイデンティティ、自立といった成長・発達に関する研究を中心に概観し、学生エンゲージメントの理論的・概念的な特徴を整理した。その成果の一部は、複数の大学や学会等の講演会・シンポジウムで発表した。 研究課題2「国内の関連するデータや分析結果を収集し、メタ分析を行う」について、大学教育において学生の学習への関与を扱う実証的・実践的研究を中心に概観した。その多くは、学習に対する意識や行動が、学習成果や汎用的能力の獲得(感)とどのように関連するか、あるいはどのような影響を及ぼすかといった問いのもと、直接的・間接的調査によって捉えようとするものであった。学生エンゲージメントとの関連で位置づけられた研究はほとんどみられないものの、学習者の関与が学習の促進に重要であることが指摘されている。また、自身が携わった大規模学生調査および既卒者調査のデータを学生エンゲージメントの観点から再分析し、その結果の一部を学会等において発表した。 研究課題3「学生エンゲージメントの尺度を含む質問紙の作成および予備調査」および第4の研究課題「質問紙調査とインタビュー調査の実施」について、いずれも2年目に行う予定であったが、中学1年生と高校1年生を対象に予備的調査を実施し、その一部を論文の形で著した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1の国外の学生エンゲージメントに関連する先行研究のレビューについて、より広範な視点から文献を収集・分析し、関連する理論・概念の中で差異化しつつ位置づけ、一定整理することができた。また、米国で開催された学会大会への参加も通じて、教育の在り方を考える上でエンゲージメントが極めて重要であるという認識を共有することが出来た。国内では十分な研究の蓄積がない学生エンゲージメントに関する研究を進められたことによって、日本の高等教育政策や教育現場で生じている様々な問題・課題を解決するための視点を得ることが出来た。ただし、関連する研究は膨大に存在するため、引き続き先行研究のレビューを行う必要がある。 研究課題2の国内の学生エンゲージメントに関連する先行研究のレビュー(主に成果のメタ分析)について、直接的にエンゲージメントを取り扱う研究が少ないこともあり、学習態度や意欲、行動、成果といった学習に関わる広範な視点から関連する研究を概観した。メタ分析が可能なほどデータの精度が十分に整っていないことから、自身が携わった大規模調査データの再分析や、動機づけなど心理学において蓄積のある研究成果なども含め、引き続き先行研究のレビューを行う必要がある。 研究課題3および4の調査実施について、初年度は中高生への試行調査のみであるが、元々調査の実施は2年目の計画に組み込まれていることから、進捗としては順調であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
扱う概念が広いこともあり、国内外の先行研究のレビュー(理論面と実証面)は引き続き行う必要がある。理論面では、様々な理論・概念を含み込んでいる(相互に関連し合っている)ため、より精緻化していく必要がある。実証面において、国外の研究では、学生エンゲージメントに関わる様々な枠組みやモデルを提示しつつ、それらが学習上の成功と密接に関連していることを実証的に示している。理論面、実証面双方を整理しながら、国内の学校教育の文脈にも耐えうる学生エンゲージメントの概念・理論・モデルの構築を目指す。 2年目は、こうしたレビューの上で調査を構成・実施する。トランジションの視点を重視していることから、大学生のみならず、中高生や社会人も射程に入れつつ、横断的かつ一部は縦断的に調査を実施する。また、量的調査のみならず、質的調査の可能性も視野に入れて検討を行う。 最後の研究課題5として、「日本における学生エンゲージメント研究の発展に資する礎を築くとともに、大学教育改革・改善の有効性を高めるための実践的知見を紡ぐ」ことを挙げている。最終的には、課題1から課題4までの理論的・実証的検討を通じて、中高との接続も視野に入れた大学教育の質的向上に資する実践的知見を導出することにつなげていきたいと考えている。
|
Research Products
(5 results)