2019 Fiscal Year Research-status Report
米国における大学教授職構造変動下の女性大学教員のキャリア形成支援システムの研究
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18K02715
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授 (60153912)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 女性大学教員 / 大学教授職 / 高等教育論 / アメリカ / ジェンダー / FD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、以下の三つの研究課題を設定した。 I. 個別大学における、女性教員への総合的なキャリア形成支援システム構築への先進的実践事例を収集・分析し(課題Ⅰ)、 II. 全米的な趨勢を把握するために、全米的学術学会・団体が提供する女性大学教員へのキャリア形成支援政策の基本的動向を解明することで(課題Ⅱ)、 III. Ⅰ、Ⅱに基づいて、女性大学教員のキャリア形成支援に関する理論モデル構築のための試論を示す(課題Ⅲ)。 本年度は、申請書で設定した課題Ⅱである、全米的学術学会・団体が提供する女性大学教員へのキャリア形成支援政策の基本的動向を解明するための事例の収集と分析の継続すると同時に、課題Ⅲである、女性大学教員のキャリア形成支援に関する理論モデル構築に着手した。 このうち、課題Ⅲについては、第一に、テニュア制度崩壊あるいはcontingent faculty(非正規教員)の激増に象徴される、大学教育における大学教員の位置づけの変化――これまでの大学教育において自明の前提であった、大学教員の中心性が侵食・変質しつつあること――をどのように説明しうるのかについて、いくつかの理論モデルが公表されており、Finkelstein, Conley, Schusterによる、大学教育のパラダイムⅢ転換理論はその典型である。第二に、このような大学教授職構造変動下における女性大学教員へのキャリア形成支援は基本的にどのような理論的構造をもつのか。これについては、成員における代表性(representation)、同一労働同一賃金、昇進への同一機会という指標のみでは不十分であり、より緻密なアプローチが必要である。DavisによるContingent Labor Conditions Scoreの開発は、従来の理論的研究の空隙を埋める一つの試みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2月から3月にかけて予定していたアメリカ合衆国調査が、先方の都合(研究所・大学図書館等の閉鎖)により短期間しかおこないえなかった。特に、テニュア獲得へ向けて、女性大学教員のリクルートと定着の促進への障壁を除去するための「全米的ベスト・プラクティス」の解明と普及における、学術学会独自の機能については資料の収集と分析が未着手であり、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究所・大学図書館等の閉鎖は2020年度の後半まで続く恐れがあり、この場合、アメリカ合衆国調査の順延を検討すると同時に、2021年度まで研究を継続することもありうる。
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Causes of Carryover |
2020年度アメリカ合衆国調査において、先方の大学・研究所の閉鎖により、予定されていた期間を大幅に変更せざるをえなかったため、予算執行も変更せざるをえなかった。
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