2020 Fiscal Year Research-status Report
米国における大学教授職構造変動下の女性大学教員のキャリア形成支援システムの研究
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18K02715
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授 (60153912)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女性大学教員 / 米国高等教育 / ジェンダー / テニュア制 / ファカルティ・ディベロプメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、(1)特定の大学における先進的実践事例を収集・分析した上で、(2)全米的な趨勢を把握するために、学術学会・団体が提供する女性大学教員へのキャリア形成支援政策を解明し、(3)女性大学教員のキャリア形成支援に関する理論モデルのための試論を示すこと、という三つから成り立っている。 本年度はこのうち、(2)を継続研究すると同時に、(3)の理論モデル研究として、女性大学教員のキャリア形成に関する近年の事例研究(たとえば、Myers, 2009等)を参考にしつつも、スミス(Smith, 2005)、コリンズ(Collins, 2019)らの業績を中心に分析を進めた。これら二人の論者の議論は基本的に批判社会学のそれであるが、いずれもフェミニズムとの関連を意識しており、本研究課題とも親和性が高いからである。 アメリカ合衆国の教授職におけるテニュア制度の崩壊が、ファカルティ・ディベロプメントの発展にどのような影響をおよぼしたのかを論文として公表した。この中では特に、ファカルティ・ディベロプメントを、「テニュア獲得への苦闘の経験」としてではなく、「つねに活力にあふれた(flourishing)大学教員としての成熟の過程の経験」へと転換させ、教員の全ライフステージとワーク・ライフ・バランスへの配慮という、優れて人間主義的な論点を優先させているコンウエイによる理論モデル(Conway, 2012)に着目した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度にはCOVID-19の世界的蔓延を受けて、予定していた2回の米国調査を中止せざるをえなかった。このため、研究期間延長願を提出し受理された。2021年度は、予定していた米国調査による資料収集とインタビューをおこなわずに研究を進める。よって、研究計画の一部を変更する(下記参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画では、ケーススタディで参照すべき一次データ(primary data)として、イン(Yin, 2013)によって定式化された4つを収集し分析の対象とすることとして、個別大学あるいは全米的学術学会における、女性大学教員への総合的キャリア形成支援システムの構築に関わる、①ドキュメント、②アーカイブズ文書、③関係者へのインタビュー、④「研究」「教育」「大学運営」に関するFD関連セッションの直接観察を挙げた。しかしながら、このうち、③と④は収集を中止として、これまでに収集したデータのみを分析の対象とする。本年度は、研究課題中、残されている、女性大学教員のキャリア形成支援に関する理論モデル構築を、D. E.スミスのinstitutional ethnographyを主要な手法として開発するという課題を主に研究を継続する。
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Causes of Carryover |
本研究はもともと、2010年度完結であったが、COVID-19の世界的蔓延のために、研究の柱の一つである海外での資料収集と調査がかなわなくなっただけでなく、研究計画の変更を余儀なくされた。結果として、研究延長願を提出し受理され、2021年度完結となったものである。
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