2019 Fiscal Year Research-status Report
「経験省察型」卒業論文・修士論文指導モデルの開発研究
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18K02733
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Research Institution | Seisa University |
Principal Investigator |
三輪 建二 星槎大学, 教育学研究科, 教授 (50212246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 省察 / アクションリサーチ / メンタルマップ / 経験省察型論文 / 課題検証型論文 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は主として2つの研究を実施した。 1つは2018年度に翻訳刊行した『教師の能力開発:省察とアクションリサーチ』(鳳書房、2018)の著書ナンシー&キース・アップルヤード(Nancy & Leith Appleyard)の両氏を招待し、星槎大学において2日間のワークショップを実施した。9月21日:Reflective Practice in your Professional Life(省察的実践をあなたの専門職生活の中に)、9月22日 Reflective Practice as a Key Feature of Action Research(アクションリサーチのカギを握る省察的実践)である。参加者はそれぞれ25名ほどであり、経験省察型の研究論文を志向している院生および論文指導を行う大学院教員の参加があった。このワークショップをめぐる実践記録と分析は、三輪建二・大野精一「省察的実践とアクションリサーチ:アップルヤード夫妻のワークショップを中心に」『星槎大学大学院紀要』1(1), pp.36-48にまとめている。 もうひとつは沖永良部島でのスクーリング調査である。2020年2月6日から8日にかけて、鹿児島県大島郡沖永良部島において、星槎大学サテライトカレッジ(酔庵塾)の社会人学生、サテライトカレッジ長および職員にインタビュー調査を実施した。沖永良部島には星槎大学サテライトカレッジ(酔庵塾)が開設されており、通信教育による大学教育を提供している。この大学通信教育が島民にとって持つ利点と課題をインタビュー調査で抽出した。遠隔授業の利点はあるものの、本土からの知(学問知と)、島民の、島の文化にねざした学習ニーズ、経験知とのあいだには、なおかい離があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アップルヤード『教師の能力開発:省察とアクションリサーチ』の刊行をふまえ、今年度は著者をお呼びし、9月21日・22日に2回にわたるワークショップを開催することができた。 「省察(リフレクション)」「アクションリサーチ」「メンタルマップ」「実践と理論の王冠」などをキーワードとするワークショップであり、全国から参加した社会人大学院生は、経験の省察をとおして理論化をはかる「経験省察型」の論文のイメージが具体化できたようであり、また研究者を含む大学教員も、社会人大学院生の論文指導のポイントを把握する貴重な機会となった。 またこのワークショップは、三輪健二・大野精一「省察的実践とアクションリサーチ:アップルヤード夫妻のワークショップを中心に」『星槎大学大学院紀要』1(1), pp.36-48にまとめられ、星槎大学機関リポジトリにて閲覧できるようになっている。 2020年に入っての沖永良部島でのヒアリング調査は、大学院よりは学部における経験省察の学びと、それをふまえた論文指導について調査研究する機会になった。星槎大学という本土からの専門知・学問知と、島民の島文化に根差した経験とのあいだにはかい離が見られ、それを埋めるためには、ハード面(履修システム)の改善が必要であると同時に、教育というソフト面でも、島民に優しい論文指導が必要であることが見えてきた。とはいえ、まだこの調査は個人情報がからむこともあり、調査報告書にまとめていない点が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2(2020)年度は集大成の年度にあたる。 また星槎大学は今年度4月より、博士後期課程を開設し、社会人大学院生に博士論文を執筆するための論文指導を開始している。「理論と実践の往還」を標榜していることから、卒業論文・修士論文(専門職学位論文)だけではなく、博士論文において共通するのが、経験省察型の論文と論文指導となる。 博士課程の社会人大学院生の論文指導をアクションリサーチし、論文指導のモデルを手じすることが令和2(2020)年度の課題である。 その一方で、論文指導の一環である「赤字添削」については、指導をしてもらえたという評価が高いこともある反面、職業経験のある、したがってプライドのある社会人院生の自尊心を傷つける行為、あるいは「権力関係」のもとでの強制と受け取られる可能性が見えてきている。そこで、あらたな関連課題として、赤字添削指導についての調査(先行研究、インタビュー調査など)を行い、星槎大学教職研究に投稿するを予定している。
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