2018 Fiscal Year Research-status Report
教学IRを基盤とし,LMSを活用したラーニングアナリティクスによる授業改善
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18K02740
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 秀雄 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (70208221)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教学IR / LMS / ラーニングアナリティクス / 科学技術者倫理 / 研究倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は初年度であることと,すでに実際の講義が開始されているため,まず最低限のシステムを整備し,可能ならば同年度前期(「前学期」)にシステムを一部組み込んだe-シラバスを試験的に運用して,具体的な問題点を探ることを目指した. 具体的には(1)e-シラバスに搭載する内容の選定:e-シラバスの本質は学習管理システム(LMS)であるが,一般ユーザー,つまり受講生からすると,①各種教材の提供システム,②学習成果物を蓄積するe-ポートフォリオ,③公開内容物や公開対象を設定した上でのコミュニティ,さらに④ユーザーインターフェース「ビュー」から構成されると考えて良い. そのためにまずe-シラバスに搭載する内容物を選定することとした.(2)e-ポートフォリオの設定:搭載物に対応する学習成果物は,直接的な統計資料,テキスト類,写真・画像・ドキュメントなどのファイル類,場合によっては容量の大きな音声・動画ファイル類,更にはブログ類などに渡る. これら(1)および(2)について,取り扱うべき項目の検討はかなり進んだ.しかしシステムの基盤となる学習管理システム(LMS)については,既存システムを利用するため,予想外に仕様の策定および調整に手間取っており,平成30年度内のシステム構築と運用を見送らざるを得なかった. ただしシステム運用のための機材(コンピュータおよびタブレット端末,記録用カメラ)は当初予定通り購入を完了した.また研究の基盤となる歴史的,理念的問題については研究が大きく進展し,研究会等で成果を2回報告することができた.さらに本研究をきっかけとして,この問題をめぐる他大学の研究者との交流や情報交換も進んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,思想的,利点的には米国のプラグマティズムに基盤を置く経験主義教育思想を現代化したものである.これは第二次世界大戦終了後日本に直輸入されて,少なくとも表面的には教育体制を一変させた.しかし日本がそれまで維持してきた知識注入型,系統学習型の教育システムとは全く異なるものであったため,我が国にはなかなか根付かなかった.「這いまわる経験主義」あるいは「這いまわる社会科」と評される社会科教育がその象徴である.科学教育や工学教育においても事態は同様であり,学習者中心の経験主義的アプローチは昭和30年前後に大きく衰退した. 他方,米国ではスプートニクショックをきっかけとして一時,系統学習型の科学教育が力を得た.「PSSC物理」がその代表である,CBA,CHEMS,BSSB他が続き,これらは我が国中等教育の『学習指導要領』にも大きな影響を与えた.しかし米国教育の根幹はやはり経験主義教育であり,科学教育においてもラザフォード、ホルトン、ワトソンらによる“Harvard Project Physics”(「プロジェクト物理」)やHOSC物理など,それまでにない複合型の教材を使用する経験主義教育が現れた.これらは我が国においても『理科Ⅱ』という形で影響を与えている.すでに学問的な蓄積もあり,これらの過程を明らかにすることにおいて,研究は大きく進展した. しかしながらこれらの知見を背景にしながら,学習管理システム(LMS)というツールを介してラーニングコミュニティを形成するという点においては,既存システムとの整合性が壁になり,運用開始が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
思想的,歴史的背景については大きく研究が進展しているため,今後は,取り扱う内容を最小限に抑えて既存の学習管理システム(LMS)との接続を最優先とする.そのために既存システムのアンケート機能等を利用して,まず講義内および講義後に実施する双方向型ラーニングコミュニティの形成を目指す.学習者のアクセスデータの取得には研究倫理面での問題をクリアする必要があるため,当初はテキスト他最低限の情報のやり取りに留め,リアルタイムあるいはそれに準ずるアクセスデータの取得は後日実施することとする.その上で,得られたコメント等のテキストデータを学習者の了解を得た上で外部に書き出すシステムを構築する. e-ラーニングシステム「アゴラ」についても問題なく運用できることを確認する.加えて,e-ポートフォリオを含む学習管理システム(LMS)を本格的に運用し,アクセス状況,事前学習状況,課題提出状況,コミュニティへのアクセス状況を把握し,分析を試みた後,当該システムを本格的に運用してラーニングコミュニティの活性化に努める.その上で,アクセス状況,事前学習状況,課題提出状況,コミュニティへのアクセス状況を,研究倫理および個人情報に配慮した上で各種データを取得する.またe-ラーニングシステム「アゴラ」については,アゴラ利用クラスとe-シラバス利用クラスとを解答状況,解答の内容,使い勝手等の面から比較する.さらにe-シラバス利用に関するアンケート調査を実施し,その結果を分析する.取得したデータについては個人情報に配慮した上で処理し,その解析結果については明らかになったものから学会等で発表,報告する.
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Causes of Carryover |
機器購入に際して,振込料金等手数料の不足が懸念されたたため,一部を残存させた.
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