2019 Fiscal Year Research-status Report
行動問題を示す自閉症児の保護者支援に関する参画型教師研修プログラムの開発
Project/Area Number |
18K02753
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
岡村 章司 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00610346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 信三 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (50324950)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 行動問題 / 自閉症 / 保護者支援 / 教師研修 / 参画型研修 / 予防的アプローチ / ペアレント・トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教師が行動問題の改善に向け保護者と協働することを実現するために、保護者との連携状況に応じた、保護者支援に関する参画型の教師研修プログラムの開発を目的とした。2年目は、教師と保護者が協働し、家庭で保護者が子どもに適切な行動を教えることを目的とした行動問題予防研修を行った。ホームワークで課された内容を踏まえ、「講義、個人ワーク、グループワーク、共有」のワークショップ形式の研修プログラムを、特別支援学校教師、保育士を対象に行った。また、事前にペアレント・トレーニングに参加した特別支援学校教師を対象に、全3回の短縮版研修も実施した。アセスメントツールを用いた家庭での情報収集をもとに、各教師が目標設定や支援計画の作成を行う研修を実施した上で、教師は保護者とともに支援計画を改善し、研修において保護者による支援の結果に関する記録をもとに、進捗状況をふり返った。その結果、保護者は家庭で自閉症児に対して支援を行い、自閉症児の行動変容を図ることができた。しかしながら、各教師や保護者によって成果の表れ方に差異があるため、教師の保護者支援アンケート、保護者の抑うつや養育スキルの自己評価に関する尺度と併せて、データをさらに分析していく予定である。なお、研修を実施する前に、これまでに整理された「療育支援」の内容(三田地・岡村,2009)を改めて検討し、書籍として整理した。 さらに、保護者が子どもに適切な行動を教えることを目的としたペアレント・トレーニングを実施し、スタッフとして参加した現職教員を含む大学院生を対象に、参加および参加前後の研修による学びの効果について検討した。その結果、1名以外の対象者において、応用行動分析学の知識、保護者支援の意識の得点が肯定的に変化した。さらに、母親の精神健康度が改善し、各子どもの標的行動は達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動問題を示す自閉症児の保護者支援に関する研修プログラムとして、①保護者へのコミュニケーションスキル研修、②行動問題の予防研修、③学校における行動問題の問題解決研修、④家庭における行動問題の問題解決研修、の開発を目的としている。これまで①、②のプログラムを実施し、②では約30名を対象とすることができた。また、特別支援学校教師だけでなく、保育士も対象とすることができ、短縮版を含めた複数のプログラムを実施することができた。①のプログラムの効果が確認できたことに加えて、家庭で保護者が子どもに適切な行動を教えることを目的とした、①の内容を踏まえた上での研修及びペアレント・トレーニングの参加を通した研修の各プログラムは、教師と保護者の協働を促し、効果的であったと示唆された。その他に、教師の免許更新講習において、④のプログラムの予備的研究として、行動問題を示す幼児児童を担当する教師が家庭場面における行動支援計画を作成する研修を昨年度に引き続き行った。研修後に、受講者各自が現場において保護者と協働して実践することが課題として残された。1、2年目の成果として、今後の研修を実施していく特別支援学校との協力体制を確立することができた点からも、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
家庭における自閉症児の行動問題の問題解決研修を行う前に、学校における行動問題の問題解決研修を実施する。具体的には、教師が学校での自閉症児の行動問題を維持している要因を分析する機能的アセスメントを行い、その内容に基づき行動支援計画を立案し、実行評価する研修となる。機能的アセスメント研修等に関する先行研究等の知見を踏まえ、必要な研修内容とその配列化を進めていき、研修方法の検討も行う。さらに、学校種による違いを考慮し、通常の学級担任を対象とした場合には、行動問題を示す自閉症児に限らず、支援計画に基づく支援が学級全体に及ぼす効果についても検討できるよう、研修プログラムを精選していく。研修プログラムをもとに、研修を実施する学校や教師の実態に応じ、研修内容や方法を含めたプログラムの適用の仕方を検討し、成果を検証するための評価方法を確定する。実際の研修会では、複数回にわたる研修と短縮版の研修を行い、自閉症児の行動問題の改善状況等を評価する。研修の成果を家庭に導入する可能性についても模索していければと考えている。なお、コロナ禍の影響により、対面式による集団での研修を実施することができない場合には、ICTを用いた研修方法を検討していく予定である。また、研修会の形態をとらず、研修プログラムを学校で活用してもらう方法も検討していきたい。具体的には、研修プログラムの内容を踏まえ、学校における自閉症児の行動問題の改善を図ることを目的としたコンサルテーションやケース会議を、特別支援教育コーディネーターと協働して行っていくことも考えられる。 研修の経過や結果を踏まえ、併せて1、2年目に実施してきた保護者支援に関する教師研修の成果をもとに、家庭における行動問題の問題解決研修に向けた内容の検討を行う。また、これまで実施した研修の結果について、データのさらなる分析をして効果検証を行い、論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
学会主催のマイクロ・カウンセリングの研修会、ペアレント・トレーニングの養成者研修や国際学会への参加を予定していたが、大学の業務やコロナ禍により参加することができなかった。それらの繰越金については、研修で必要となるipad等の備品や消耗品の購入、研修会や学会の参加費用に充てる。
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Remarks |
岡村章司(2020)学校の先生への保護者支援のススメ.発達教育,39,4-11. 以下の論文が、日本特殊教育学会第16回実践研究賞を受賞した。森一晃・岡村章司(2018)通常の学級担任に対するクラスワイドな支援を用いた行動コンサルテーションの効果の検討―教師の支援行動の評価を含めて―,特殊教育学研究,56,169-182
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