2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性疾患児の「語り」からとらえた自己の形成と病院内教育実践の課題に関する質的研究
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18K02760
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
齋藤 淑子 都留文科大学, 教養学部, 特任教授 (30817755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性疾患 / 自己の形成 / ナラティヴ / 生活史 / PTSD・心的外傷 / 院内学級 / 病院内教育 / 教師の役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.小児がん専門医1名と元院内学級教師1名への聞き取り調査を実施した。両名から小児がん治療や教育に関わるようになった契機、印象に残った子どもとのエピソード、エンドオブライフ期を迎えた子どもへのトータルケアの一環としての教育の役割について伺い、病院内教育の重要性について考察を深めることができた。 2慢性疾患で入院中や入退院を繰り返す子どもの自己理解を育み、セルフケアを支える具体的な教材・ツールとして、日本小児血液がん学会(JCCG)長期フォローアップ教育ワーキンググループと協同で学童期低学年向けのポートフォリオ「自分の木を育てよう」(試作版)を作成した。それをもとに2020年12月20日に行われた全国病弱教育研究会東京大会(web大会)にて発表し、試験的に活用することができた。 3病院内教育で学んだ元生徒たちが制作した作品等のデータを収集・整理し、その一部を全国病弱教育研究会東京大会(web大会)にて「東京の病弱教育の主人公たち」として発表した。また当事者・家族・および教員から作品作りのプロセスで印象に残ったエピソードを収集し、作品の解説と併せて「作品紹介」(DVD)を作成した。 4.小児がん経験者の聞き取り調査をもとに、経験者たちの退院後の学校生活における困難や対処について分析・考察を進め、2020年度9月19日よりweb開催した日本特殊教育学会第58回大会の自主シンポジウムにて日本小児血液がん学会(JCCG)長期フォローアップ教育ワーキンググループと協同で発表した。また2021年3月に「小児がん経験者の退院後の困難・対処・周囲の対応に関する調査報告」としてまとめた。 5.慢性疾患を抱える児童・生徒の理解を進めるために令和元年に作成した「自己の育ちシート」(案)の項目を再検討しさらに困難や課題をとらえやすいように構造化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全国的な新型コロナ感染拡大の影響で、予定していた病院内教育を経験した元生徒たち3名と保護者3名への聞き取り調査を延期した。また元生徒たちの作品や資料収集も計画通りに進まず、会場での作品展開催も行うことができなかった。そのため期間を延長して、聞き取り調査や作品・資料収集を行い、作品展についてもweb等の活用も含めて令和3年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.予定していた病院内教育経験者・保護者・教員・医療関係者への聞き取り調査を年内に行う。 2.これまでの調査研究をもとに、ナラティヴの重要性と病院内教育の教師の役割について研究会や学会等で発表する。 3.病院内教育経験者が入院中に制作した作品、その作品に関するエピソード、作品・資料集を作成し、その一部を作品展として発表する。 4.病院内教育の成立・展開・実践に関する資料を収集・整理し、これまでの調査研究と併せて報告集を作成する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大のため、予定していた調査が行えなかった。また学会等もweb開催となり旅費を使用しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画として、web等を利用して調査インタビューを行うこと、学会参加ため旅費を使用しないことが見込まれるため、報告書を作成し、成果の発表を行う予定である。
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