2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性疾患児の「語り」からとらえた自己の形成と病院内教育実践の課題に関する質的研究
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18K02760
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
齋藤 淑子 都留文科大学, 教養学部, 特任教授 (30817755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性疾患 / 自己の形成 / ナラティヴ / 病院内教育 / 院内学級 / 教師の専門性 / PTSD・心的外傷 / 長期フォローアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.病院内教育の経験者たちのナラティブ(作品)の収集とweb作品展の開催:前年度に引き継き病院内教育で学んだ児童生徒たちの絵画、詩、作文、書道、手芸、音楽、写真等を募集し、合計34名から作品とコメントを集めてDVD作品集を制作することができた。また2021年10月の全国病弱教育研究会東京大会にてweb作品展を開催し、研究会のHPでも動画とPDFによる「東京の病弱教育の主人公たち」を約1カ月間配信した。多くの参加者・視聴者から、厳しい治療を受けながら子どもたちは豊かな表現力を発揮し貴重な学びの時間としていることが伝わってきたとの感想が寄せられた。この取り組みによって病院内教育の重要性を多くの人に提示することができた。 2.慢性疾患を抱える子どもの保護者4名と院内学級経験者1名からの聞き取り調査:保護者から子どもが入院中、退院後、現在の生活に至る様々なエピソードが語られ、病院内教育と教師の役割や学校教育への要望が出された。また保護者自身が子どもとの闘病生活の中で多くのことを学び、それを今の生活の中で活かしていることについても語られた。この調査から慢性疾患を抱える子どもの保護者にとって、病いの経験の意味が示されるとともに、教育面からの保護者へのフォローアップの必要性が示唆された。 3.自分自身の病院内教育実践の分析と報告:全国病弱教育研究会東京大会フォーラムにて「小児がんの子どものトータルケアの一環としての教育のあり方~これまで そして これから~」というテーマで発表した。特に身体的、社会的、時間的な制約が厳しい状態にある移植部屋、個室隔離の子どもや終末期を迎えた子どもへの教育支援のあり方について事例を挙げて提示した。参加者からコロナ禍で一層子どもとの関係性を築きにくい状況が続いているなかで、教育実践の本質について考える機会になったとの評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染への配慮から、予定していた院内学級を経験した元生徒や医療関係者へのインタビュー調査を延期せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
①新型コロナ感染拡大のため実施が困難であった病院内教育経験者からの聞き取り調査を、遠隔での実施も含めて行う。 ②これまでの調査から得られた病院内教育経験者のデータを分析し、病いの経験が自己の形成にとってもつ意味について構造化し、論文を完成させ、報告集として提出する。 ③これまでの調査から得られた病院内教育の教師、保護者、病院関係者から得られたデータを分析し、病院内教育の教師の専門性と課題について論文化し、報告集として提出する。 ④日本におけるトータルケアを推進してきた医療者と教育者によるフォーラムを開催し、これからの病院内教育実践のあり方について再考するとともに、コロナ禍によって大きく揺らいだ医療と教育の連携について考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大のため、予定していた調査が行えなかった。また学会等もweb開催となり旅費を使用しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画として、web等を利用して調査インタビューを行うこと、学会参加ため旅費を使用しないことが見込まれるため、報告書および資料集を作成し、成果の発表を行う予定である。
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