2018 Fiscal Year Research-status Report
知的・発達障害児の運動発達アセスメント体制の整備~画像評価支援ツールの開発と実践
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18K02764
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
雨宮 由紀枝 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (40366802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 聡 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (20328537)
佐藤 麻衣子 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (40220040)
森山 剛 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (80449032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アセスメント / 知的・発達障害 / 粗大運動 / 質的評価 / 画像技術 / 発達支援 / 標準化 |
Outline of Annual Research Achievements |
療育・保育・教育現場において、知的障害および発達障害のある子どもの運動面の困難さを的確に把握し、科学的根拠に基づく発達支援を行うため、「運動発達アセスメント」の実施体制を整備するための研究を段階的に進めている。 【項目A:「運動発達アセスメント」の実施と発達支援】 ①児童発達支援センターにて8回、小学校特別支援学級にて2回、保育園にて6回、計16回・延べ172名の子どもに対し、粗大運動発達検査TGMD-3によるアセスメントを実施した。順次結果をまとめ、保護者・保育者・教員にフィードバックを続けている。 ②アセスメント実施施設の子どもを対象に、個別の発達支援方法について保護者・保育者・教員とともに実践的に検討した。経験のない動きや苦手な動きを伝え、普段の遊びに取り入れるなどの工夫が行われた結果、半年後の再アセスメントの際に改善している子どもも多く、アセスメント体制を整える必要性が示唆された。 【項目B:画像技術を用いた支援ツールの開発】 ①評価者育成のためのeラーニング用として、アセスメントの際のチェックポイント抽出と映像化を行った。 ②子ども向けeラーニング用として、漫画タスクカードをプロの漫画家に依頼して作成し、保育園と小学校特別支援学級において試行した。短期間で動きの定着が図られるなど、漫画タスクカードによる視覚的支援の有効性が示唆された。 ③効率的に入力・評価作業ができるよう、タブレット版の動画コンテンツ埋込式のアプリ開発を行い、解析ツールの利便性を高めた。 ④画像解析による粗大運動評価手法の開発については、動画像から複数の人物の姿勢を推定するライブラリ”OpenPose”を利用して評価の効率化を試行中である。 以上の成果を国際会議・学会・大学紀要・研究会等で発表し、一定の評価を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【項目A:「運動発達アセスメント」の実施と発達支援】 概ね計画どおり進めることができた。日本女子体育大学総合型スポ―ツクラブ内に開設予定だった「子ども運動クリニック」は、大学の方針変更により見送られたため、アセスメントを実施した外部施設の子どもたちを対象に、保護者・保育者・教員とともに実践的に検討することとした。 【項目B:画像技術を用いた支援ツールの開発】 ④画像解析による粗大運動評価手法の開発については、別途採択されたJSPS科研費 18K11444(代表:鈴木聡、H30~R2年度)の課題と重なるところもあり、雨宮はその分担研究者として並行して進めている。 【項目C:評価者育成とアセスメントの普及】 2年目以降の計画としたが、前倒しで保育園にて3~6歳児のアセスメントを開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
【項目A:「運動発達アセスメント」の実施と発達支援】 現場の事情を鑑みつつ可能な限り定期的にアセスメントを継続し、縦断的なデータを蓄積していく。それらの分析を基に、保護者・保育者・教員とともに発達支援へ役立てる方策を検討していく。アセスメントの実施⇒子どもへの発達支援計画の立案⇒介入実施⇒評価・再アセスメントの実施…という発達支援サイクルを実現し、介入事例を積み上げていく。 【項目B:画像技術を用いた支援ツールの開発】 ①②粗大運動発達検査TGMDのバージョンアップ(TGMD-2から3への移行)に伴う変更を、評価者育成および子ども向けeラーニングに反映していく。 ③支援ツールのタブレット版への移行はほぼ完了し、解析ツールとして既に実践に使用している。さらに、結果が理解しやすく発達支援に役立つ報告ツールとしても活用できるよう、保護者・保育者・教員・OT/PT等の現場のニーズを吸い上げながら、使いやすいツールに改良していきたい。 ④アセスメントの労力軽減、質的評価の客観性の担保、データ収集・分析の利便性向上などを実現するため、画像処理技術の利用の可能性を探っていく。 【項目C:評価者育成とアセスメントの普及】 粗大運動発達検査の標準化に向けて、広く定型発達児も対象にアセスメントを実施してデータ収集する。個人情報保護の流れから、昨今人を対象とした測定が難しくなる中、さらなる測定対象の開拓が必要となる。小学生を対象とした測定として、学童保育に通う児童が予定されている。 その他、世界各国の介入研究やシステマティックレビューなどの最新情報の把握に努めながら、日本におけるアセスメント体制の実現に向けて検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
【理由】成果発表のための外国旅費(2回⇒1回)、国内旅費(東京近郊の開催)が計画より安価だった。日本女子体育大学に開設予定の発達クリニックが見送られたため、子ども用運動器具一式が不必要となった。画像データ用ストレージ(外付けHDD)等、データベースシステム構成を検討中のため未購入の備品がある。 【使用計画】次年度分の設備備品費と合算して必要な備品を購入する。一部を成果発表・研究動向調査のための海外・国内の旅費・参加費に補填する。
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Research Products
(5 results)