2022 Fiscal Year Annual Research Report
The development of speech fluency and the natural recovery of stuttering
Project/Area Number |
18K02785
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 友彦 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (40159893)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児 / 発話 / 流暢性 / 発達 / 吃音 / 自然回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
吃音のほとんどが幼児期に発生し、多くが学齢期までに消失する。この現象は吃音の自然回復と呼ばれ、関係する要因の1つとして言語獲得が従来から指摘されている。しかし、この現象がどのように文構造の獲得と関係し、どのように文産出の発達と関係しているのかは明らかになっていない。 この点を明らかにするためには吃音の発生前から自然回復までの文構造の獲得に視点をあてた縦断的研究が必要であるが、吃音の発生と自然回復は予測できないため、このような縦断的研究の報告はほとんどない。今回、偶然ではあるが、言語獲得にに関する縦断研究の過程で吃音の自然回復を示した幼児1名を観察する機会を得た。本研究はこの幼児について吃音の発生前から消失期までの1歳6カ月から3歳2カ月に至る自然発話の録音データを文構造の獲得との関係で分析したものである。最終年度にはこれまでの研究結果のまとめを行った。 本研究の成果は以下の通りである。吃音の自然回復を示した幼児1名の文構造の獲得を、動詞とそれが必要とする要素である項との組み合わせに視点をあてて検討した。その結果、吃音は動詞と項からなる文の産出が急増する時期に発生し、この文が安定して使用される時期に減少し、消失した。動詞と項からなる文が急増する時期は格助詞「が」と「の」の出現時期と対応していた。格助詞「が」と「の」の出現は句構造と呼ばれる文の構造の成立に関係するという言語理論および言語獲得研究上の知見がある。句構造の成立によって句を単位とした文産出が開始されると考えられる。したがって、本研究の結果から、吃音の発生は句を単位とした文産出システムの初期における不安定さを反映し、吃音の自然回復はそのシステムの安定した状態を反映していることが示唆される。 本研究の意義は幼児期における吃音の自然回復と言語獲得との関係について文構造の獲得と文産出の発達を踏まえた仮説を提案した点にある。
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