2019 Fiscal Year Research-status Report
北欧諸国のインクルーシブ教育における包摂と排除の変遷
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18K02793
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
是永 かな子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (90380302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北欧 / 特別ニーズ教育 / インクルーシブ教育 / 包摂 / 排除 / 通常学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の全体構想は、福祉国家体制のもとインクルーシブ教育を先進的に進めてきたスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドにおける包摂と排除の変遷を、文献研究と調査研究の方法論を用いて分析することを通じて、今後の日本のインクルーシブ教育の在り方の示唆を得ることである。とくに本年度はインクルーシブ教育の具体化において、包摂の逓増として通常学校に期待される機能や役割を分析した。文献研究としては、校内体制整備プログラムや段階的支援、柔軟な学級編成等、通常学校における体制整備、教育方法、教育内容の工夫や多領域・他機関との連携に注目しつつ、考察を行った。調査研究としては、特別学校を原則廃止したノルウェーと特別学校数を年々減らしているフィンランド、多様な教育的ニーズに多様な学校教育制度で対応するデンマーク、自治体立知的障害特別学校を維持しつつ各基礎学校でのインクルーシブ教育の促進も同時にめざすスウェーデンにおいて、現地調査と資料収集を行った。ノルウェーではハマール市、フィンランドでは首都ヘルシンキとユバスキュラ市、デンマークでは首都コペンハーゲン市とオーデンセ市、スウェーデンではイェーテボリ市、ボロース士、パティレ市を中心に調査対象校の選定や研究協議を行い、実態調査と文献収集を行った。また日本における知的障害特別支援学校の実践や各地方自治体における就学支援、通常学校における個別指導と集団指導の連動、多層指導モデルの実践、授業のユニバーサルデザイン、里親支援などについても、北欧の実践分析の視点も念頭に考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査研究では2か国の計画が、4か国フィールド調査を行うことができた。従来フィールド研究を行っている都市のみならず、新たな都市においてもフィールドを開拓することができた。それらはデンマークにおけるオーデンセ市であったり、ノルウェーにおけるリレハンメル市であったりする。またフィンランド・ユバスキュラ大学とのこれまでの連携を基礎に、国際学校ではオーストリア、香港、アメリカの研究者とも共同発表を行うことができた。今後もオーストラリア・ウィーン大学とは共同研究の可能性を追求していくことを確認している。国際的な共同研究や研究協議のフィールドが当初の計画以上に展開していることから、上記区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は「インクルーシブ教育の推進と特別学校改革」をテーマに研究を推進する。具体的方法として、文献研究としては、特別学校が対象とする障害種とその教育方法や教育内容の変化、特別学校の存廃も含めた近年の改革動向、教員の専門性向上・維持策、特別学校のセンター的機能の強化等について考察する。調査研究としては、多様な特別学校を各自治体のイニシアティブで運用するデンマーク及び知的障害特別学校を維持するスウェーデンにおいて、現地調査と資料収集を行う。デンマークのオーフス大学Niels Egelund教授及びメトロポリタン大学のStine Kaplan Jorgensen准教授、そしてスウェーデン・イェーテボリ大学のGirma Berhmu教授とマルメ大学のJerry Rosenqvist教授に研究協力を依頼しているため、デンマークでは首都コペンハーゲン市、スウェーデンではイェーテボリ市とマルメ市を中心に、実態調査と文献収集を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題では経費の大半を旅費が占める。今年度は科研費による研究費を基礎としつつも、大学内外の研究費を旅費目的として多く申請し、複数の研究費を得ることができた。それらの研究費や旅費は2019年度に使用しなければならず、2020年度に繰り越し不可であった。そのため大学内外の研究費の使用を優先したため、本科研費は次年度使用額が生じた。
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