2020 Fiscal Year Research-status Report
北欧諸国のインクルーシブ教育における包摂と排除の変遷
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18K02793
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
是永 かな子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (90380302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北欧 / 特別ニーズ教育 / インクルーシブ教育 / 包摂 / 排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の全体構想は、福祉国家体制のもとインクルーシブ教育を先進的に進めてきたスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドにおける包摂と排除の変遷を、文献研究と調査研究の方法論を用いて分析することを通じて、今後の日本のインクルーシブ教育の在り方の示唆を得ることであった。具体的に令和2年度には「インクルーシブ教育の推進と特別学校改革」に注目して、文献研究と調査研究の方法論を用いて研究を進める予定であった。しかしCOVID-19対応のため令和2年度には現地の調査研究は実施できなかったため、これまで実施した調査結果の分析を行ったり、日本国内の関連する実践について調査研究を行った。例えばそれらは、さらなるインクルーシブ教育を進めるための知的障害特別学校の統廃合も視野に入れた議論の着手の有無、特別学校に就学している子どもの受け皿の具体化、社会・情緒障害児問題に対応する特別な学級や学校の動向、特別学校の巡回相談機能の強化、特別教育にかかわる教員の力量向上、スーパーバイザー、コーディネーター、コンサルタントの機能の付与と学校全体のインクルーシブ教育を推進する体制、インクルーシブ教育を推進する過程における特別学校就学児の包摂や排除、特別学校の教育方法や教育内容の変化・改善、今後求められる特別学校の体制整備や連携等の項目について、各国や日本国内の特別学校改革動向の観点から実践を検討した。文献研究としては、特別学校が対象とする障害種とその教育方法や教育内容の変化、特別学校の存廃も含めた近年の改革動向、教員の専門性向上・維持策、特別学校のセンター的機能の強化等について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19対応のため、令和2年度には北欧における現地調査を実施することができなかった。そのため研究活動はやや遅れている。現在に至っても、北欧に訪問するめどが立っていない。また北欧に入国できたとしても、関連施設訪問の受け入れを承諾してもらうことは容易ではない。研究者や実践者への個別聞き取りやオンラインを用いた研究活動の遂行に関しても現在検討中である。研究成果の公表に関しては、これまでの調査研究や日本国内での本研究テーマに関連する実践を分析することによって、一定進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、北欧の実践からの課題提起をいかに受け止めるかを主題に、日本のインクルーシブ教育への示唆を得ることを目指す。例えばそれらは、ノルウェーにおける通常学校への介入方略の開発と特別学校の廃止、フィンランドにおける段階的支援の導入と特別学校数の減少、スウェーデンにおける特別教員の専門性の通常学校での活用と特別学校の維持、デンマークにおける地域課題に応じた多様な教育形態の保障と特別学校の活用等のインクルーシブ教育実践などが想定される。各国のインクルーシブ教育の変遷を排除から包摂への流れやその揺り戻しについて、教育政策や通常学校と特別学校の在り様に着目しつつ、体制整備、教育方法や教育内容の視点から解明する。北欧の現地調査が困難な場合は、研究者や実践者への個別聞き取りやオンラインを用いた研究活動の遂行を検討中である。他にも日本国内における文献研究や関連する日本国内の実践に関しても総合的に考察することで対応する。
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Causes of Carryover |
COVID-19対応のため、令和2年度には北欧における現地調査を実施することができなかった。そのため海外旅費を想定していた予算が使用できなかったため、次年度使用額が生じた。今後の使用計画としては海外調査が実施できる状態になれば、現地調査を実施したり、研究者や実践者への個別聞き取りを計画したい。海外調査が実施できない状態が継続されるようであれば、オンラインを用いた研究活動の遂行に関して現在検討中である。
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Research Products
(42 results)