2020 Fiscal Year Research-status Report
子どもの学びの連続性を踏まえた特別支援におけるICT活用
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18K02829
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
東原 文子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (60272150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北畑 彩子 聖徳大学, 児童学部, 助教 (40779881)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / ICT / 学びの連続性 / 心理アセスメント / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「学びの連続性」(縦の連続、横の連続)を目指す特別支援教育がICT活用をベースに実現できることを検証する。 研究1は、小学校1年通常学級児童29名を対象に、算数文章題解決や作問のツールとしてのタブレットPC教材の活用法を検討した基礎研究である。幼児期の遊びや生活で培われるインフォーマルな数操作から、就学後のフォーマルな算数へのスムーズな移行をねらい、タブレットならば擬似的な具体物操作が可能であることに着眼した。教材学習前後での文章題ペーパーテストで絵や図を描いて正答した人数が有意に増えるなどの効果が見られた。学習困難児も級友と共にタブレットで学び、いつでも無理なく具体物操作の世界に戻れる可能性が考えられた。 研究2では、通常学級に在籍する自閉傾向の小5女児を対象に、Excelで自作した漢字熟語学習教材、及び、学校で用いられる、PC画面上のキャラクタを動かしていくタイプの市販のプログラミング学習教材を用いて、個別指導を試みた。新型コロナ感染症予防の観点から保護者の希望で、対面ではなくオンライン(Zoom)による双方向テレビ会議の方法で実施したところ、問題なくできただけでなく、保護者がその指導の続きを家で試みるというコロナ禍ならではの家庭との連携研究が実現できた。もともと家庭との連携研究を行う予定であったが、Zoomを利用することが日常的になった現在では、教材のやり取りや、指導方法の伝達など、研究を計画した頃よりも容易になっており、むしろ今こそ取り組むべき研究であることもわかった。 研究3では、コロナ禍のために対面授業中止となり、聴覚障害学生支援研究はできなかったが、その代わり、オンライン授業で、家庭にある身近な素材を用いた小学生用の理科実験に取り組み、ICT教材を操作して実験結果をまとめるといった、「特別支援におけるICT活用」を将来行う教員の養成研究ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、新型コロナ感染症の拡大予防のため、勤務先の大学では対面による授業や、研究参加者を招いての個別臨床指導等ができなかった。しかしながら、研究協力校の小学校通常学級における実地研究は9月から再開でき、令和元年度にはできずに後に回していた、就学前後の学びの連続性を踏まえた算数学習のタブレット活用の基礎研究ができたこと、また、対面指導の代わりに大学生にはオンライン授業、研究参加者の小学生には家庭と連携してオンラインによるPCを用いた学習指導ができ、今後もそれが続けられる見通しがついたことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き個別心理検査や行動観察により研究参加者の認知特性と学力のアセスメントを行うとともに、特別なニーズのある子どもの特性を考慮したICT教材を開発する。また大学での教員養成プログラムに、特別支援教育へのICT活用の学びを取り入れる方策も検討する。 研究協力校での、通常学級の小学生に対するタブレット活用研究としては、令和2年度は小学校低学年の算数分野でのつまずきに対応する教材開発を行い、幼小接続部分のスムーズな学習移行(縦の連続性)について基礎研究ができたため、令和3年度は他教科にもそのような基礎研究を続けたい。 しかし万一新型コロナ感染症の影響で対面による実験研究が中断せざるを得ない場合は、現在進行中のオンラインによる小学生や大学生の指導を中心とした研究を続けることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症のために、令和2年度は大学授業がオンライン授業となり、聴覚障害学生支援研究のための謝金が全く不要であったことが予想外の残金が出た理由である。令和3年度も感染症対策の観点から、学生に大学で謝金を支出して研究補助業務をさせる可能性は低い見込みである。一方、令和2年11月からZoomを用いた家庭との連携研究を開始したところ好評であったため、令和3年度は早い時期からオンライン教育相談のシステムを確立するための機材を購入するために次年度に予算を使用する。
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