2018 Fiscal Year Research-status Report
オノマトペの音声感性情報を活用した幼児のための道徳教育オーディオブックの開発
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18K02839
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
藤野 良孝 朝日大学, 保健医療学部, 准教授 (40462767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オノマトペ / 幼児 / 道徳科 / 規範意識 / 絵本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幼児の「いじめ」「ルール違反」等の問題点を改善させる構成的要素として、オノマトペの音声感性情報に着眼し、小学校で完全実施される「道徳科」に関する知識の早期成熟化を育むための「オノマトペ・オーディオブック」を制作することを目的としている。30年度は、オノマトペ・オーディオブック制作の第一段階として、「幼稚園での道徳にかかわる問題の実態」と「道徳問題の理解を促すシナリオ」について調査分析を行い、以下の成果を得た。 [1]奈良県H幼稚園の教諭18名を対象に、幼稚園における園児の道徳的問題の実態についてフィールド調査を実施し得られた顕著な問題内容・思考課題について、KJ法を参考にグループ化した。この結果、グループは「1.乱暴的」、「2.口論・否定語」、「3.奪う」、「4.ルール違反」、「5.割込み」、「6.無視」、「7.独占」、「8.いたずら」、「9.おせっかい」の9つに集約された。特に、「乱暴」に関する内容が多数記録され、幼児は相手に自分の気持ちや意図をどう表現したらよいか分からず、乱暴という誤った行為をしてしまう可能性が考察された。 [2]道徳問題の理解を促す絵本のシナリオは、幼稚園教諭が園児の道徳的問題に対して指導した内容を教育的な視点から総合的に検討し、10内容を選定した。シナリオと連動させるオノマトペは、オノマトペの専門家がフィールドノーツのシナリオ概要と内容、辞典を参照しながら、実際の読み聞かせ場面をシミュレーションし、現場のイメージが喚起される音を選んだ。シナリオの構成は、どこで誰が何をして、どうなったのかを段階的に展開するようにした。これにより、幼稚園教諭は読み聞かせを行う際、道徳的な問題に至るまでの経緯、危険の認識、やってしまった子・やられた子の心情、解決策などを話の流れから、問いかけすることを可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
30年度の研究状況は、概ね予定通りに進捗していると考えられる。下記に具体的な進捗状況を報告する。 [1.研究目標の達成度]当初の研究計画に挙げていた、①幼稚園での道徳にかかわる問題の実態と②道徳問題の理解を促すシナリオの検討の2点は予定通り目標達成した。 [2.研究タスク]幼児の道徳的問題にかかわる実態は、奈良県のH幼稚園の全面的な協力を得て、多数のデータを収集することができた。得られたデータに基づき、道徳的問題のグループ化、シナリオの作成を行い遂行タスクが達成された。作成したシナリオをオーディオブック上で表現する際の再現性、限界点について、絵本作家とイメージスケッチによる検討や他の道徳絵本を参照しながら多面的に議論を行い、教育的に有用な方向性を導き出した。また議論の中から、オノマトペに対する学び手の視線停留の問題が挙げられたため、オノマトペ道徳絵本の視線停留に関する調査研究を行い、その特徴傾向を示した。更に、次年の研究予定の1つであった色彩オノマトペの学習的機能の研究についても先行実施することが出来たことから、計画以上に研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
下記に、今後の具体的な研究推進方策について述べる。 [1]オノマトペ道徳教育絵本及びオーディオブックに付与する擬音語・擬態語の文字型(ひらがな・カタカナ)、文字のフォルムデザイン(MS明朝体、ゴシック体、手書き風等)、呈示箇所の適切性分析、イラストと調和した色彩選定など、学習効果の観点から感性評価実験を行い、その有用性を総合的に検証していく計画である。別途、シナリオごとのオノマトペの音色パターン「弱い-強い、低い-高い、短い-長い等」の音声収録を行い、聞き手にとってどのような音色の特徴がより効果的であるのかを聴取実験から明らかにする。 [2]被験者に感性情報が内包された「いらいら」「ばたん」等のオノマトペを視聴させ、道徳的問題にかかわる問題場面を鮮明にイメージできる、学んだ知識を忘れずに自らが行動に移すことができるか否かを、道徳科の理解・定着に有用なメディアであることを読み聞かせの実践を通して示していく計画である。
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Causes of Carryover |
本年度の予算で、オノマトペ道徳絵本にかかわる制作を作家に依頼中であったが、制作途中で追加依頼項目が幾つか挙がった為、作業時間の延長が不可欠となった。すなわち、制作の追加依頼項目が増えたことが、次年度使用が生じた理由として挙げられる。4月末には完了予定なので、次年度使用は問題ないと言える。今後の使用計画としては、道徳教育用のオノマトペ・オーディオブックの開発費を計上する。また、オノマトペ道徳絵本の読み聞かせ効果の検証のための簡易型脳波計の購入費も支出予定である。
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