2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Use of 360-degree Movies to Facilitate International Collaborative Learning
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18K02841
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
佐藤 慎一 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (10410763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影戸 誠 日本福祉大学, その他部局等, 客員教授 (50351086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全天球映像 / 国際協働学修 / Project Based Learning / Virtual Reality / 高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
全天球カメラにより、国際協働学修場面、学生による海外フィールドワークの状況等、体験型学修の様子を初年度に引き続き全天球動画として記録した。具体的には、学部における国際交流事業の様子、学部1年生による正課科目としての海外フィールドワークの様子、また、大学院生と学部生が連携して取り組むカンボジアにおける教育支援プロジェクトの様子等である。昨年度、撮影された映像の活用イメージが持てないなどの理由から、学生により映像が十分に記録されないという状況もあったが、本年度は、学生自身による映像記録を十分に行うことができた。これは、撮影した映像をヘッドマウントディスプレイ(HMD)により実際に体験したこと、また、その映像体験を踏まえて撮影方法について議論したことの効果と思われる。特に、全天球カメラの位置に仮想的な人が居るものとして意識することで、違和感のない映像となることが確認され、そのことを意識した記録が行われた。 研究初年度である前年度にも多くの全天球動画を記録できたことで、本年度は、実体験をする前、事前学習において全天球動画を体験させることにも多く取り組んだ。昨年度には、主に、振り返りの活動の中で全天球動画を閲覧することで、没入感により、従来型の映像と比べ、映像体験者が緊張感や共感等、非言語的・感情的な面での刺激を強く感じていたことを指摘した。今回、事前学習における活用を積み重ねる中で、没入感がもたらす空間的な認知(活動時の相手との距離感や活動場所の広さなど)により、学生自身がこれから行う活動への実感が高まることも示唆された。 また、複数の全天球映像を往来し、インタラクティブな閲覧を可能とするアプリケーションの開発にも取り組んでいる。本研究で得られた知見を踏まえ、全天球動画活用を簡易かつ効果的に行うことを目指したものであり、今後、実証的に活用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、価格的にも技術的にも手が届く範囲となってきたVirtual Reality技術を実践的に教育活用していこうというものであり、実践者となる学生自身による活動も研究のスコープに含まれる。初年度の取り組みとして、全天球カメラでの記録に戸惑い、思うような映像を撮影できない学生もみられ、活動を広がりという点での課題が出てきたことを挙げた。こうした問題は、個人差はあるものの、蓄積された全天球動画の体験、その考察を行うことで解消されつつある。感覚を掴んだ学生が拠点となり、他の学生にも展開していくことで、実践的な活用を加速させることができたものと考えている。 こうして多くの全天球動画が蓄積され、体験する学生数が増えていく中で、編集された・作り込まれた全天球動画だけでなく、閲覧者の意思により複数の全天球動画を行き来するようなインタラクティブ動画の発想が生まれ、実際に、プロトタイプを開発できたことは、計画以上の成果である。直接的な研究成果ではないが、実践の効果を高めたり効率化したりできる可能性があるアプリケーションであり、実践を通じてより多くの研究的な知見を得ることに寄与するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
全天球映像を用いた事前学習、および、事後の振り返りにおける活用方法をデザインし、いくつかの活動をモデルとして実践を積み重ねてきた。その中で、事前学習、事後の振り返りによる全天球映像閲覧による効果が明らかになりつつある。ただし、事例数は限られており、多くの学生にとって、全天球映像は試験的に体験したに過ぎない状況である。活動を継続し、全天球動画の撮影のノウハウや映像コンテンツの蓄積も増えてきたところで、今後、さらに実践的な活用を繰り返し、全天球動画の本質に迫る。 また、学生自身による自律的な活動を完全に実現することは、本研究の範囲を超えるが、その実現に向けて試行を行い、その中から課題を明らかにすることには取り組む計画である。これまでに蓄積した多くの全天球動画を、事前学習、あるいは、振り返りの文脈で引き続き活用していくことで、課題を追求していく。これまでは、オーサリングソフトにより編集された全天球動画を、ヘッドマウントディスプレイに一覧表示し、利用者が選択して閲覧することしかできなかった。今回、プロトタイプとして開発したアプリケーションにより、インタラクティブに複数動画を往来できるようになったため、再現できる映像表現の幅が広がった。こうしたインタラクティブな全天球動画を閲覧することによる学修効果、また、学生自身がこうしたコンテンツをデザインする中で得られる学修上の効果についても考察していく。 以上を総合的に分析・考察し、拡張された全天球動画を活用した効果的な学修のモデルを提案するとともに、広く一般の学生が自律的に活用していくための課題を整理する。
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Causes of Carryover |
研究、および、予算使用は概ね計画通りに進行しているが、本年度は、旅費が計画より多めとなり、物品費が少なくなっている。旅費は、研究成果を国際会議にて発表する機会を多く得たためである。物品費に関しては、研究状況を踏まえ、インタラクティブ全天球動画作成・閲覧用のアプリケーション開発をすることとしたことに関係する。インタラクティブ全天球動画の編集用のコンピュータ、また、その閲覧ヘッドマウントディスプレイは、開発したアプリケーションに適したものを選定するため、今年度の導入を見送り、次年度の初期段階で選定・導入することとした。 最終年度は、これまでの成果を国際学会で発表することを予定しているが、中止、あるいは、オンライン開催等で旅費の支出が予定より少なくなる可能性もある。その場合には、オンラインによる没入感の伝達についての研究を追求できるよう、物品や開発謝金に可能な範囲で用いることを計画している。
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