2019 Fiscal Year Research-status Report
自律的な積み上げ学習につながる授業内・外学習時のメタ認識出現条件
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18K02847
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Research Institution | Otsuma Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
中尾 桂子 大妻女子大学短期大学部, 国文科, 准教授 (20419485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
延 恩株 大妻女子大学, キャリア教育センター, 准教授 (00554742)
森下 淳也 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20182230)
中西 千春 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (30317101)
川井 一枝 宮城大学, 基盤教育群, 准教授 (40639043)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタ認識 / 自律学習 / 授業内・外学習 / 学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学習者自身の学習に対するメタ認識が活性化される条件を探ることにある。授業で目標に向かって積み上げていく学習について,また,授業外で日々機械的に積み上げていく学習において,学習者自身が自律的に学習を活性化させていく条件を検討するものである。学習プロセスを観察し,学習者の認識を観察することで,学習におけるメタ認識が意識される条件を特定することを目指している。その最終目的は,どのような学習環境を教室で教師が作るのが,学習者の支援となるのかを確認することにある。また,その後の自律的学習につなぐ観点を探ることにある。 研究方法としては,期間,目標,内容,教員の異なるいくつかの授業の流れと,授業とは関係なく,学習者が授業外で自律的に進める学習プロセスと意識を観察し,授業参加者,授業外学習継続者の意識を分析することで,学習者のメタ認識条件を探ろうと考えている。具体的には次のように実施する。 授業内の学生の関心点を観察するため,授業後に,授業課題に対して関心を覚えた点とそれに対してどのような行動をとったかを記述に残すように指示し,その記述内に見られる学生の認識が,メタ認識に関わるものか,個人的関心のものか,個人的に見たテーマに関連するものかをラベル付けして,分析する準備とする。また,学期の開始時,途中,終了時に内省した授業への個々人の参加状況を,学期末に並べて比較し,学習者の意識,メタ認識に関する言及回数,場面,対象を調べ,それらに関する考えや意識を質的に分析する準備とする。 授業外の学生の関心点,継続の動機を確認するために,教職者に,授業外で授業とは関係ないが必要だと考える学習を続ける動機と,継続,結果に関する意識を調べる。 これらの調査の結果を総合して,自律学習のための教師の支援のポイントを探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度前期の授業形態が変わり、実施条件が前年度までと異なったこと、ならびに、授業自体の閉講で授業外学習システムと連動させた授業実践の機会がなくなったことで、大きく方向転換するほどではないが、授業観察の観点と分析観点を再検討している。 2018年度の実践と印象調査から、「自主性」、「客観視」、「見守り感覚」が意識できる環境整備がメタ認識活性化に効果的だと判断された。そこで、2019年度は、授業後の「振り返り」の記述行為を、「自主性」、「客観視」、「見守り感覚」が意識できる環境下におくために、漢字学習システムに加えて新たに、アカデミック・ライティングクラスで掲示板を利用する形で実践した。 2018年度後半~2019年度後半にかけて、<成績に関係ない>行為として、①漢字システム上での教師の<見守り>、または、②掲示板でのクラス全員の<見守り>を受ける状況を設け、アンケート、または、掲示板で、自らの学習結果、プロセスへの<内省記述>を指示した。この自主的な内省時の記述に、メタ認知的知識の3要素(三宮、2018)である、課題、方略、(自身の特性の)客観視、3点の記述が見られたこと、また、見守りという状況、授業目標と到達点の明確な理解、到達点への自身の到達度に対する批判的考察が見られることから、メタ認識と学習促進に有益な影響を与えると考えられた。 2020年度は、メタ認識活性化条件として、見守り意識、客観視、自主性の活性条件をより詳細に検討する予定であったが、授業形態が変化したことで(オンライン化、海外協力校の授業閉講)、上記①②の<見守り>状況とは異なる環境下での観察に替えた。現在、2019年度までのメタ認識意識について授業種別に分析を進めているが、さらに、オンライン授業における「自主性」、「客観視」、「見守り感覚」が意識できる環境と要因を考察するために調査観点を見直している。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果の総合的な分析と考察を行なうために、最終年度も,2019年度に新規依頼した協力校と合わせて授業実践とその観察を継続して観察対象と記録を増やす予定であったが、2020年度前期は、2つの問題:授業外見守り漢字学習システムを用いる予定の日本語の授業が,協力校,担当者ともに閉講,その他の全担当授業がオンライン化,これらにより、現状に即した観察が主となる。 そこで,担当授業の全てにおいて,講義,演習の種別に関係なく,全授業の学習後に記述式内省活動を組み込むこととする。2019年度には教員と学生の授業内外の境界に対する意識が異なっている点が観察観点の指標化においての課題であったが,2020年度前期は全授業のオンライン化で,オンデマンド型の授業は,より一層,内外の境界があいまいになる。また,Zoomを用いたピア・ラーニング活動では,一度も面識のない学生どうしのコミュニケーションのための時間を設けることにより,授業課題実施と人間関係のためのコミュニケーションの時間の境界分けが不可能になる。したがって,分析時に,学習に関する内外境界の意識を確認するのではなく,何を指向するかという点で意識化される点を見ることとし,記述式内省シートのフォームを変更する。 2020年度前期のオンライン授業は全11回の実施となるため,5,6回目以降から記述式内省活動を実施し,「振り返り」の促進状況,プロセスを観察する。また,「自主性」は,成績に関係なく実施を指示される振り返りを行うか,また,継続するかという点で観察し,さらに,オンライン授業での教員,学生同士の目線に対する意識や,やさしさという感覚を感じるかという印象調査によって「見守り」の印象を観察するものと替える。
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Causes of Carryover |
2020年度は、協力機関との打合せを兼ね、参加を予定していた国際会議が中止、または、オンライン開催等での秋以降への延期となったため、助成金予定利用の方法を次のように利用する。 ①オンライン会議に参加するのに適切なカメラと画像処理機能を搭載するハードディスク・メモリー容量の大きいコンピュータ、②オンライン授業での学生の動向確認を支援するためのスケジュール管理用モバイル媒体機器、③秋以降の出張費(研究分担者、協力者との打ち合わせ、学会発表、資料収集のために予定しておく)、④音声データの文字起こし、⑤授業観察と学習者の記述、個々の学生に対するインタビューの記録は、Zoomを経るものとするために音声データの文字起こしを業者に依頼、⑥本研究成果とシステムマニュアルを合わせた配布用CD付き冊子(配布用パッケージCDの作成、システムの利用方法を書いたマニュアルに、本研究成果を合わせた冊子を作成する)
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