2020 Fiscal Year Research-status Report
グループ作成機能に着目したモバイルコミュニケーションへの依存に関する研究
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18K02871
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
加藤 尚吾 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80406735)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グループチャット / テキストメッセージング / ネット依存 / モバイル端末 / 情報教育 / 情報モラル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、コミュニケーションを目的とするモバイル端末のアプリケーション(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への依存に関して、アプリケーションのグループ作成機能に着目し、作成されたグループにおけるコミュニケーションの感情面を詳細に検討するものである。コミュニケーションメディアへの依存は相手との関係維持を強く求めることや相手に対する過剰な気遣い等のつながりの維持に対する不安が原因の場合も少なくない。また、感情が伝わりづらい文字ベースのモバイル端末のコミュニケーションへの依存には、メッセージングにおける感情伝達や感情方略等の送受信者の感情面が深く関係していると考えられる。グループでのコミュニケーションは一対一に比べて感情的な方略が多様になり、メンバーの心的な負担につながり、結果としてモバイル端末のコミュニケーションのことが気になりすぎてしまうような状況が生じ、依存の原因の一つになっているのではないかと考えられる。更に、グループからの追放や無視が現在のネットいじめの主な原因の一つと考えられる。本研究では、教育現場におけるネットいじめ等の課題への対応や予防という応用についても提案する。 令和2年度は本研究課題の目的であるテキストメッセージングにおける感情の伝わり方に関する部分を主に進めた。具体的には、大学生を対象にしたオンラインでの実験を実施し、データ分析を行った。このオンライン実験では参加者に細かい状況と役割を想定してもらい、それぞれの状況での役割において、テキストメッセージングにおける感情の伝達を測定するとともに、参加者の感情伝達に対する確信度、テキストメッセージングにおける依存の程度、性格特性などを測定した。 また、令和1年度から論文の投稿・査読手続きが継続している研究があり、成果報告のための分析と執筆を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令によって人と人とが対面することを避ける必要があることや教育機関の急なオンライン対応に伴う仕事量の増加によって、研究方法の変更を余儀なくされたことや学会発表の中止など大きな影響があった。しかし、研究課題自体はおおむね順調に進展させることができた。とくに、オンラインでの実験を実施し、そのデータ分析を進めた。 オンラインでの実験は、大学生を対象に行った。具体的には、Zoomによる実験の説明と教示、ウェブを用いた質問紙実験法を併用して行った。この実験では、材料として過去の実験データである実際に大学生が書いたメッセージ文3種類(丁寧な文、くだけた文、くだけた文+絵文字や顔文字)を準備した。それらのメッセージを参加者にメッセージを受け取った読み手の立場になって読んでもらい、書き手のメッセージ送信時の感情の解釈を行ってもらった。得られた解釈データから、その正確さを詳細に分析した。その結果、丁寧な文のメッセージが書き手である送信者の感情を読み手である受信者が正しく解釈している程度がもっとも高いこと、くだけた文では絵文字や顔文字が含まれるほうが正しく解釈される程度が高いことが示された。さらに、メッセージの読み手である受信者が書き手である送信者の感情を正しく解釈できているという確信度については、受信者の正しい解釈との間に関係が認められなかった。これらの結果から、グループでのやり取りにおいても同様の傾向が見られるかどうかについて、今後検証する必要があり、これについては今後の課題である。以上の実験から得られた知見と課題によって、令和3年度の研究計画にスムーズにつなげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、まず平成30年度に行った予備調査および令和1年度に行った調査、令和2年度に行った実験の分析から得られた知見を基にさらに仮説を追加、修正しつつ、それらの検証を行う。また、スマートフォンのアプリケーションのようなメディアは使用者の増加や熟達によって使用者の使い方は変化する。また使用する世代によって異なることもある。そのため、調査は必要に応じて継続する。これらの調査、実験によって積み重なった知見を加えながら、モバイル端末を用いたコミュニケーションアプリケーションへの依存に関するモデルを検討、開発、修正を並行する。また、令和2年度は新型コロナウイルス感染によって計画を変更し実施を延期せざるを得なかった初等・中等教育現場におけるネットいじめ等への対応や予防策を、教育現場の教員へのインタビュー調査の実施、また引き続き、研究協力者として教育現場の教員に加わってもらい、現場のニーズを常に踏まえて検討する。 令和3年度に関わらず実施することはオンラインを活用しながら次の通り予定する。1)最新の知見を本研究に活かす:関連する論文や研究発表を常に調査し、最新の知見を本研究に活かす。また、専門的知識と経験を有する研究協力者との議論を、オンライン会議システムを用いて行う。また、オンラインで開催される学会に参加し、関連する研究者と交流し、研究計画を常に見直し、改良できるようにする。2)逐次国内外の学会で成果の発表:本研究課題の遂行の過程で得られた調査結果や実験結果等を、迅速に社会や教育現場で役立たせるために国内の学会、及びおそらくオンライン開催ではあるが海外の学会において積極的に発表する。
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Causes of Carryover |
平成30年度より、得られた成果の価値の高さによって、成果報告のかたちを国際会議での発表からできるだけ早い時期でのインターナショナルジャーナルへの論文投稿へ切り替えている。さらにコロナウイルス感染拡大の影響による会議の中止等で成果報告や資料収集のための出張旅費の使用がなかったため、それらが次年度使用額となった。令和3年度の研究費使用計画としては、令和3年度も引き続き世界的なコロナウイルス感染拡大が続いていることから、多くの会議のオンラインでの開催が決定されている。したがって、令和3年度もインターナショナルジャーナルへの論文投稿のための物品購入と英語翻訳・校正、オンラインでの学会参加費を使用する計画とする。
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Research Products
(4 results)