2019 Fiscal Year Research-status Report
発達障害者の就労支援のための社会性スキル獲得とプログラミング能力の育成
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18K02896
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小越 康宏 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80299809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小越 咲子 福井工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (70581180)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発達障害者支援 / 個別支援システム / プログラミング教育 / 就労支援 / 社会スキルトレーニング / 表情認知 / 表情表出 / AR(拡張現実) |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害児者のキャリア教育を教育機関が積極的に支援することは非常に重要である。発達障害児者はIT分野、特にプログラミング開発やデバッグ作業などにおいて才能があるといわれているが、しばしば学習段階でのつまずきで学習意欲が低下するなど困難な面もあり、せっかくの才能を伸ばしきれないことがある。 そこで、発達障害児者の特性を生かし、楽しく取り組みながら論理的思考を高めることを目指した新しい学習教材の開発と検証を推進してきた。また、発達障害児者は、ITやプログラミングに関する知識や能力があっても、コミュニケーションに苦手意識があるために、就労まで結びつかないケースも多く、このことが非常に深刻な課題となっている。 そこで、この問題を解決するために、社会スキルを獲得するための各種トレーニングシステムを開発し、プログラミング学習と併用しながら、就労に繋げるまでの総合的な支援体制づくりを行った。2019年度に取り組んだ具体的な研究概要を下記の①~③に示す。 ①発達障害児者の特性に応じたインタフェースを持つプログラミング教材の検証を行った。発達障害児者の脳特性を考慮し、つまずきをなくしモチベーション向上を誘発するようなインタフェースについて検討を重ねた。 ②将来的に就労に繋げていくためにも社会スキルの獲得が重要であり、表情認知支援システム、表情表出システム、音声感情表現システムを開発した。特に、表情認知支援システムは携帯可能なスマートグラスに実装し、実生活の中で活用可能とした。 ③上記の①と②のツールの学習スコアや状況を我々の開発したICT個別教育支援システムに統合し支援プランに活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目となる2019年度は、①初年度に開発した発達障害児者の特性に応じたインタフェースを持つプログラミング教材の検証を行った。発達障害児者の脳特性を考慮し、プログラミングの失敗(コンパイルエラーなど)に対するつまずきをなくし、合理的な判断(デバッグなど)ができるような訓練方法、上手く動いたときにモチベーション向上を誘発するようなインタフェースについて検討を重ね、プログラミングを楽しく学べるように工夫した。 ②また、将来的に就労に繋げていくためには、社会スキルの獲得が重要である。コミュニケーション能力の向上を目指すために、パソコンとWebカメラで構成した表情認知および表情表出のトレーニングを行うシステムを開発した。表情表出トレーニングにおいては、表出した表情種別の判定結果やその強度についても(様々なグラフ表示により)視覚的に分かり易く訓練者にフィードバックし楽しみながらトレーニングできるように工夫した。 さらに、AR(拡張現実)を応用した表情認知支援システムを開発した。スマートグラスを装着し、実際に対面する人の表情をスマートグラス付属のカメラで撮影し、スマートグラス上で対面する人の顔の付近に表情種を教示するものであり、表情を読み取るのが苦手な人への支援が期待できる。 また、初年度に開発した感情豊かな会話を目指した発話トレーニングシステムについても、2019年度は(英会話における苦手意識をなくすことを目的に)英語の発音に特化したシステムの改良を行った。 ③上記のプログラミング教育、および、社会スキルトレーニングにおけるスコアは、我々の開発したICT個別教育支援の日々の行動情報とともにシステムに統合され、支援のプランに活用している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウィルス感染防止対策が喫緊の課題となっており、人を参集する形態でのプログラミング教室の開催が難しくなった。このような状況下だからこそ、積極的にネットワークを介した遠隔授業の形態による教室の実現化を進めていく必要がある。 我々の開発したICT個別教育支援システムを活用すれば、集積されるデータベースに統合される個人特性を分析することで、得意な分野を伸ばし、不得意を克服することで自信をもって取り組めるような環境づくりや支援を推進することが可能となる。 また、従前よりプログラミング学習においては、アルゴリズム学習が重要視されているが、より実践的な作業を想定して、与えられたアルゴリズムに対するコーディングやデバッグの作業など、多角的にプログラミングスキルを身につけるための学習方法を検討していく。さらに、より業務で必要不可欠となるコミュニケーションを介した仕事のやり取り、グループワークによる開発などといった練習が重要と考えており、特に、ネットワークを介してこれらの学習が行えるような仕掛けを検討している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、本研究テーマの申請時に生体アンプの購入を検討していたが、採択後は価格が高騰したため再検討し購入を保留したためである。そのため、2018、2019年度は、生体アンプの開発キット、AD変換ボード、マイコンボード等で必要なチャンネル数のみを確保してデータを収集することで試作開発と実験を進めた。 使用計画としては、2020年度は、正確なデータを計測するために、限られたチャンネル数となるが高精度な生体アンプを購入する予定である。 また、我々の作成したオリジナルのプログラミング教材はクラウド型のアプリケーションであり、ネットワークを介した遠隔での教室を開催するため、実現するためにはサーバーの運用が必要なためサーバー管理費を検討する。加えて、学習者の履歴もサーバー側に記録する必要があり、この履歴データについては、我々の開発したICT個別教育支援システムのデータベースに付加する予定であり、このサーバー運用費にも充当する予定である。さらに、学習者や支援者との連絡などの事務処理業務に対する人件費に充当する予定である。
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