2019 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒が創る「授業に埋め込まれた学習評価」の支援システム開発と実践的実証
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18K02906
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
益川 弘如 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (50367661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白水 始 東京大学, 高大接続研究開発センター, 教授 (60333168)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 問い / 思考過程 / 学習評価 / 認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習者が深い理解を実現するための問題解決プロセスの要素として「疑問」や「問い」が生まれることの重要性が指摘されている。本年度は、質問の投げかけに対して、学習者が「いかなる質問をされているか」の認識や思考過程について、大学入試センター試験、全国学力・学習状況調査、授業中のワークシート記入の3種からデータを集めた。全国学力・学習状況調査の質問紙調査を用いた「質問の投げかけ」の研究からは、「各教科を学ぶこと」の認識に大きな幅があることが明らかになった。例えば、算数や数学の教科では、「計算をすること」から「日常における課題解決に活用すること」まで、国語や英語の教科では、「漢字や単語を覚えること」から「作品を深く味わう」までなどである。このような認識の差は、いかなる授業を展開しているかによっても変わってくることも見えてきている。授業中のワークシートを用いた研究からは、教師の授業の変容によって学習観が変わっていく情報を得ることができた。また、大学入試センター試験の「質問の投げかけ」の研究では、選択肢問題と記述式問題の解答過程を、協調問題解決場面を設定してデータを集めた。この結果、出題形式によって、解答生成における思考過程が「どれが間違っているか」といった単語レベルでの判断の思考レベルから「どのようなストーリーなのか」といったモデル構築した上での判断の思考レベルまで幅が生じることが明らかになった。これらの研究によって、児童・生徒が持つ「学習観」そして「いかなる解答が求められているか」の「認識」違いが、授業中に児童生徒が生み出す「疑問」や「問い」の質に大きく影響することが予想され、各教科の深い学びを測定するための評価やCBT設計の在り方について今後深めていくための基礎的データが収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学習者自身が生み出す「問い」の背景にある認識や、「問い」を解決する思考過程についての調査は進んだが、「問い」を生成する思考過程の調査についてやや遅れている。一方で、CBTやテストにおいて、いかなる思考過程を生成しているかの調査については概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、下記の取り組みを予定している。 (1)CBT活用の可能性の追求:CBTに必要な機能要件の整理と、必要に応じて紙ベースなどによるモックアップの検討 (2)「問い」に対する思考過程の研究:「認識」の違いによる「問い」の表出のされ方の違いに関するデータを収集する。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究の遅れを取り戻そうと努力したが、全てを挽回するには至らなかった。また予定していた雇用者を確保できず、データ整理に時間がかかっている。次年度は、データ収集と分析を着実に進めていくため、繰り越した予算を活用していく予定である。
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