2018 Fiscal Year Research-status Report
攻防両視点から学習可能な情報セキュリティ・モラル教育ツールの開発
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18K02918
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
河野 和宏 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60581238)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報セキュリティ / 情報モラル / 著作権侵害 / 不正のトライアングル理論 / 状況的犯罪予防論 / 同調行動 / 規範的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,攻防両視点の観点からの教育ツールを開発する前段階として,利用者が不正行為を行う場合,どのような心理状態なのか,なぜ不正行為を行うのかを調査した.具体的には,近年,特に問題となっている,インターネット上に不正にアップロードされた著作物の不正利用を不正行為と捉え,なぜユーザは不正利用を行うのか,どのようにすれば不正利用を防ぐことができるのかを調査・分析した. 違法動画の視聴行為を不正行為と捉えた研究では,不正のトライアングル理論に基づき,動機,機会,正当化の3つの要素から違法視聴行為を考察し,その上で,状況的犯罪予防論を適用して,利用者の周囲にどのような環境を構築すれば違法視聴行為を抑制できるかを検証した.その結果,ネットワークへのアクセス制限や罰則規定の強化,ルールの遵守徹底が効果的であることを示した. 海賊版漫画などの,違法コンテンツの利用を不正行為と捉えた研究では,集団内での個人の行動に影響を与える同調志向と,社会の中で規範と考えている規範的情報の2つに着目して,利用者の効果的な利用抑制について検討した.「同調志向が高い人物であれば,規範的情報を与えることで不正利用を抑制することができる」という仮説に基づき,アンケート調査した結果,同調志向の高い人物には規範的情報を与えることで規範意識に影響して利用抑制を促すことができることがわかった. なお,これらの研究は,法律論に基づく議論やブロッキングなどのインターネット接続事業者からの対策,悪質サーバへの対策とは異なる,利用者視点からの研究であり,従来とは異なった視点からの研究である点に価値があるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,これまで過去に行ってきた情報セキュリティ,情報モラルに対する一般的な調査・分析を踏まえ,利用者の著作権侵害といった,利用者の「出来心」により不正行為を実施してしまったケースを対象に分析した.これは,交付申請書にも2018年度に実施することを記載しており,電子情報通信学会安全性研究会にて発表していることから,予定通りに進捗しているといえる.加えて,新たな視点として,同調行動や規範的影響という観点からも利用者の著作権侵害行為を分析することに成功している.研究報告まではたどり着いてはいないものの,悪意をもって意図したケースも,「セキュリティ専門家 人狼」などのゲームツールを元に,心理モデルを検討中である. 交付申請書には,2018年度の予定として,過去に開発した,セキュリティインシデントの3D疑似体験型ツールのVR化を挙げている.これは既に実施済みであり,オープンキャンパス等でツールを体験してもらっている. 以上より,交付申請書に挙げた予定通りに進んでいることから,おおむね問題ないといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した通り,これまでに得られた知見から,攻防両視点に基づく教育ツールを開発する予定である.進捗状況にもあるが,「セキュリティ専門家 人狼」などのアナログゲームも含め,デジタル・アナログ問わず,必要な教育ツールを開発する予定である.デジタル・アナログを問わない理由は,年代・習熟度の違いがあるため,状況に応じて利用する媒体が変わるためである. それらの教育ツールを開発した上で,各観点の教育ツールを交互に用いることで,どのような効果があるか検証する予定である.例えば,防御視点のみでは,攻撃者の観点を持たないため,一部の脆弱性に気づけないなど,単独の観点からのツールのみでは問題があることが想定される.そこで,交互に利用することで,お互いをカバーすることが可能かどうか検証する予定である.ただし,現在までに様々な教育ツールが開発されており,特に防御視点は数多くのツールがあることから,時間の関係上,改めて開発はせず,いくつかの既存のツールを組み合わせて検証することも考えている.
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Causes of Carryover |
VR機材の購入費,出張旅費などが,想定より少なかったため,来年度に計上する.
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Remarks |
同調行動,規範的影響に基づく研究の成果は,現在のところHPにて概要を公開中である.具体的な成果内容の発表は,2019年度以降に行う予定である.
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Research Products
(2 results)