2019 Fiscal Year Research-status Report
Practical Study of Programming Education Aiming Synergistic Effect between Block-Based and Text-Based Language
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18K02921
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
山田 耕太郎 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (20353120)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プログラミング教育 / プログラミング的思考 / 論理的思考 / ブロック型言語 / 試行錯誤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は効果的なプログラミング教育の主要因を明らかにするため,学習者のプログラム構築過程から試行錯誤や論理的思考のパターンを探ろうとするものである。プログラム構築過程はブロック型言語Blocklyのイベントメッセージを捕捉することで把握できる。 研究開始年度(平成30年度)には,試行錯誤の中でも条件分岐処理を伴う場合に学習者が場当たり的な思考に陥り,見通しを立てないまま作業を進める傾向にあることが,ブロック型言語を使った授業実践を行う前に判明したことから,その傾向の詳細を把握するためにアンプラグド的な方法で実態調査を実施し,結果について学会や紀要にて報告を行ったが,令和元年度はこの実態調査で得た結果を,数学的な考え方とプログラミング的思考との関係から捉え直して再度考察を行った。この考察から,数学的な考え方に馴染まなくてもプログラミング的思考とは整合する問題解決法(例えば数学的な考え方で解を絞り込んで正解に辿り着く方法に対して,解の候補を力まかせ探索で調べて正解を導く方法)があるため,小学校でのプログラミング教育導入後はこれらの2つの考え方のバランスに注意が必要であるとの報告をまとめ,日本算数教育学会にて発表を行った。またこの成果を反映させたボードゲーム教材を作成し,広島市内の小学校11校で5・6年生を対象としたプログラミング教育を合計39クラスで実施した。各クラス1校時のみの授業であったことから,教具(おはじき)を使ったボードゲームの必勝戦略をプログラミング的思考で解き明かす内容とし,この思考方法が他の科目を学ぶときにも使える汎用的な考え方であることを例示して今後の学びへの橋渡しをした。授業後は児童と教員を対象にアンケート調査を実施し,児童1076人,教員219人から回答を得た。この回答と教室で得られた児童の反応などは今後の研究計画にフィードバックして活用することとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではGoogle社が提供しているBlocklyを利用していることから,プログラム構築過程を把握するためにBlocklyを動作させるブラウザもGoogle Chromeの使用を基本としている。近年Google社はサイトの常時SSL化を求めており,本研究においてもインターネット経由でBlocklyのイベントメッセージを収集する必要があるため,サーバの常時SSL化を行った。また,これまでデータベースは平文での管理となっていたが,イベントメッセージを収集する際に学習者が変数に自分の実名や実住所を代入するなどした場合にプロパティ値としてそれらのデータを取得してしまい,個人情報漏洩につながる可能性が考えられたため,通信路の常時SSL化を行うと同時に,データベースを暗号化して管理する対策を行った。ただし,これまでのサーバ運用は学内LAN環境のみで行っており,イベントメッセージの収集も全てのデータを逐一把握できるテスト的な収集しか行っていないため,個人情報漏洩等が問題となる事態は起こっていない。今後はインターネット経由でのイベントメッセージ収集を行う予定であるため,慎重な検証を行った後に外部の本場用サーバに設定を移すこととしているが,常時SSL化とデータベースの暗号化作業に想定外のエラー処理や修正を要したため,研究の進捗の遅れとなってしまっている。 また,現在はBlocklyが生成するイベントメッセージを漏れなく捕捉してデータベース化を行っているが,学習者のプログラミング構築過程を把握する上で重要度の低いデータも数多く含まれてしまっていることが,データの予備的な検証から明らかとなりつつある。しかし現在のところ,プログラミング構築過程の分析の際にどのイベントを取捨選択するかまで判断できておらず,検討に時間を要する課題として進捗に影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラミング構築過程のデータ収集が遅れているため,本格的なプログラミング教育の実践とデータ収集が早急に必要である。ただし,データ収集が行えていないものの,ブロック言語とテキスト型言語を併用した授業実践を行った結果,いくつかの成果と課題が得られたため,この結果を今後の研究推進方策の基本とする。ここでは,実践の概要とその結果をまとめた後,今後の研究推進方策について述べる。 概要については,まずブロック型言語のScratchで「図形描画」と「迷路ゲームの作成」を行い,プログラミングの基本を学ばせた。その後テキスト型言語の「なでしこ」を使い,テキストでもプログラムで図形が描けることを示した。更にBlockly Gamesのサイトにある「タートル」で図形描画を行わせ,言語が違っても同じことができることを体験させた。また同サイトの「迷路」も,Scratchで行った「迷路ゲームの作成」の発展としてトライさせた。このとき,操作方法やゲームの説明は最小限にとどめ,学習者が自ら理解し試行錯誤するよう促した。 この結果,プログラミング未経験者でもブロック型言語によるプログラミングにはあまり抵抗を示すことなく学習を進めることができており,Blockly Gamesのその他のゲームにも自ら積極的にチャレンジしていた。テキスト型言語のプログラミングも,ブロック型言語での図形描画を経験していればほぼ自力で図形を描くプログラムが作成できていた。 以上のこのことから,ブロック型言語からテキスト型言語へ移行するタイミングについて,当初は半期15回の授業で緩やかに移行することとしていたが,プログラムのテーマを「図形描画だけ」「迷路だけ」に限定すると早く移行できる可能性が見えてきた。そのためブロック型言語の利用を足掛かりとする研究計画はそのままとし,今後はテキスト型言語への移行を早く行う授業設計も含めて研究を進める。
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Causes of Carryover |
年度末に参加を予定していた学会と研究会が,新型コロナウイルスの感染防止対策によって現地開催が相次いで中止され,旅費が未使用となったためである。予定通りの参加が行えていれば次年度使用額はほぼ生じなかったことと,次年度も小学校でのプログラミング教育のため教材費や授業補助者への人件費,出張費が当初計画よりも増加することが見込まれる。従って次年度使用額はその増加分に充てることとして,当初の計画と今後の研究の推進方策に沿った使用計画で研究を進める。
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Research Products
(1 results)