2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of an Experimental Platform for Educational Evaluation on Learner's Behavior Based on Biometric Information Analysis Including Pulsewave Analysis
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18K02926
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 徹哉 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40583745)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ICT技術応用 / 教育工学 / 英単語学習 / 生体情報 / 脈動波形 / 心拍間隔 / 眼球電位 / まばたき |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ICT技術を教育に活かすための実践実験プラットフォームの開発を目標として、学習効果を高める仮説/目論見の立案、検証ツールの試作、学生を対象とした実践実験と実験結果の分析を行い、仮説/目論見の検証とブラッシュアップを繰り返しながら推進しているが、特に本補助事業期間においては『脈波解析による学習取り組み姿勢の評価』を可能とする実験プラットフォームの開発に取り組んでいる。 その2年目である2019年度の目的は、前年度に小型Android端末をプラットフォームとして立ち上げた教育実践実験システムを活かして、学習取り組み時にリアルタイムに無意識の内に計測できる種々の生体情報を測定して、学習取り組み姿勢を評価するための枠組みを作り上げることである。 様々な学習に取り組んでいる時の学習取り組み姿勢を評価するには、これまでに測定に用いてきた脳波や脈波のような専用センサーを身に着けての測定だけでなく、多くの学習者が過度な被験者意識を感じることなく、気軽に学習に取り組んでいる中で測定できることが重要である。 そこで2019年度は昨年度に開発したプラットフォームに、新たに眼鏡型の眼球電位/眼筋電位測定デバイス(JINS社製MEMEスマートグラス)を接続し、眼球電位から眼球の上下左右への動きと、眼筋電位からまばたきのタイミングと強度と速度を測定できる実験プラットフォームとした。しかし、眼球の動きもまばたきも、脈動と同様に周期に交感神経・副交感神経の活動が反映されることは報告されているが、脈波解析と比べると臨床研究が少ない課題がある。 本研究においては種々の学習活動に対応したリアルタイムデータとして、眼球の動きとまばたきの情報を、脳波・脈波のデータと統合的に分析して評価に繋げられる新たな実験プラットフォームとして開発することに成功し、種々の活動時に各生体情報に連動した変化が認められることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本補助事業期間2年目(2019年度)の本研究の目的は、2018年度に立ち上げた実験プラットフォームを活かして、実際に種々の学習に取り組んでいる時の学習者(被験者)の無意識の生体情報を測定し、学習取り組み姿勢の評価を実現するための『各種センサーを用いた生体情報測定』と『得られたデータの分析』を通して『学習取り組み姿勢の評価』に繋げるための枠組みの確立である。 生体情報測定については、脳波、脈波、眼球運動、まばたきの測定を確立し、リアルタイムに測定と記録が行える実験プラットフォームとして開発することができた。 データ分析については、脈波、眼球運動、まばたきの、それぞれの周期の変動に着目した分析を確立し、学習取り組み姿勢の評価を行うことができる枠組みを確立することができた。 開発した実験プラットフォームを用いて、英単語学習やプログラム学習等に取り組んでいる時の評価に適用した本枠組みの検証実験でも、各生体情報の値に連動した変化が認められ、今後さらに教育実践実験のデータ数を増やし、統合的な分析を重ねることにより、最終目標である『学習取り組み姿勢の評価』に繋げられるものと考えられるため、2年目の進捗状況としては概ね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018-2019年度に開発した実験プラットフォームと評価までの枠組みを利用して、様々な学習取り組み状況を模した教育実践実験を実施して、被験者(学習者)が無意識のうちにリアルタイムで測定・記録が可能な生体情報として、脈動波形から得られる脈動間隔(R-R-Interval)、眼球運動の間隔、まばたきの間隔に着目して測定記録し、同時に脳波、脈波強度、血中酸素濃度、まばたきの強度と速度も記録して統合的な分析を行う。これらの教育実践実験データの収集は、比較可能な条件を整えた上で被験者数も増やして実施する。 これまでの実験でも、出題する問題を同じにするなどの形で可能な限り条件を揃えて比較可能となるように心掛けてはいるが、被験者の試験時の状態(例えば周囲の騒音や、部屋の温度等の快適性、問題に取り組む時の体の姿勢など)の個人差を無くすことができておらず、それらの違いが被験者のストレスレベルに影響を与えてしまうことで後のデータ分析にも影響している可能性が示唆された。そこで当初予定では2019年度に必ず温度を一定に保った静粛な専用実験室で被験者1名だけを対象として実験を行い、椅子も同じものを用いて 姿勢も出来る限り同じに保つなど、可能な限り全ての条件を揃えた比較可能なデータを収集することとしていたが、2019年度は先ず眼球運動やまばたき等の被験者の学習取り組み姿勢が反映される本質的な生体情報の測定と分析までの枠組み作りを優先し、実験条件を揃えて実験数を増加させての評価実験は最終年度である本年度に行うこととした。 このおかげで、学習者がより自然な状態で測定できる眼鏡型デバイスを実験プラットフォームに取り込むことができたので、本年度は脈動波形解析に加えて、眼球運動やまばたき等の他の無意識生体情報も統合的に分析することで、より確度の高い学習取り組み姿勢の評価を実現し、本研究目的が達成できるものと考える。
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Causes of Carryover |
物品費については、当初2018年度にサーバーとなるコンピュータを購入し、研究室内での効率的な実験データ収集を意図していたが、初年度は測定装置としての立ち上げを優先したためサーバーとして用いるためのコンピュータの購入が後回しになってしまったものを2019年度に購入した。しかしながら、2019年度には当初可能な限り全ての条件を揃えた比較可能なデータの収集を加速させるための支出を予定していたが、2019年度は眼球運動やまばたき等の被験者の学習取り組み姿勢が反映される本質的な生体情報の測定と分析までの枠組み作りを優先したため最終年度である2020年度の支出予定となった。 旅費については当初より学会発表を通じて多くの研究者と議論を深めることを目的とした支出を計画しており、実際に米国AACE(Association for the Advancement of Computing in Education)主催のE-Learn2018およびE-Learn2019に参加して目的を達成したが、両年ともに本補助事業からの支出のための校内手続きが間に合わなかった。今年度も必ず学会発表を行って費用を支出させていただきたい。また、人件費謝金等も支出手続きが間に合わなかったため他の費用で支払うこととなったが、今年度については実験の被験者数も増やしてデータの収集を加速させる計画であるため、本補助事業から支出させていただければありがたい。
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