2022 Fiscal Year Research-status Report
「地域の色」をテーマにアートとサイエンスを連携させた中学校の総合的学習の開発
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18K02939
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
牧野 治敏 大分大学, 教育マネジメント機構, 教授 (30165683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 康子 大分大学, 教育学部, 准教授 (10608376)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 総合的な学習の時間 / 美術教材 / 化学反応 / 色の学習 / 酸化還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
中学校の総合的な学習の時間に焦点をあて、教科横断型のカリキュラムの開発を目指した研究である。核となる教科は美術と理科であり、アートとサイエンスを融合する学習として、中学1年生を対象として、1年目は国立九州博物館と世界農業遺産を主題とした講演活動による生徒の変容を探った。2年目からはCOVID-19の影響により当初の計画の遂行が困難となったので、計画を変更した。 そこで、研究協力校との意見交換により、理科の授業で問題提起、話題提供を行い、それを受けて、美術の授業で創作活動を実施することとした。一年目は理科の授業で光と色の関係について授業を実施しが、美術教育との有効な関連を明らかにすることができなかった。そこで、2年目は、美術の授業を計画し直し、理科の化学変化と美術の陶芸を結びつけ、皿への絵付けを主とした授業実践を行った。陶芸に関わる授業として、絵付けをする皿のデザイン、題材を選び下絵を作成した後に、絵付け作業を行った。絵付け作業の実践前に、絵付けに使う釉薬の説明を行った。 3年目の実践となる昨年度は、陶芸の作品製作を核とする部分を継承しながら、釉薬の説明をより実際的とするために、釉薬の説明の際に焼きがまを準備し、焼成による色の付き方を提示した。また、理科で学習する酸化還元反応についての説明を追加した。すなわち、釉薬による絵付けが加熱により発色する仕組みと鉱物の酸化還元反応との関連を理科の教科書をもとに説明した。 美術の授業実践は、前年度までと同様に美術担当の教員が授業を担当し、陶芸、絵付けに関する指導は、地元の陶芸業者が行った。 授業実践は昨年度までと同様に、中学1年生3クラスを対象とし、釉薬と酸化還元反応の説明は、3クラス合同で行い、その後、1クラスごとに美術の授業として絵付け作業を行った。酸化還元反応については、事後のアンケートから、その学習効果を測定することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行する前提条件であった「地域の色・自分の色実行委員会」が、母体となる組織の人事異動等により、研究協力体制が大幅に変更されたこと、また、COVID-19感染症拡大により、学校へのアクセスや実践内容に制限が生じたが、その制約内で可能な研究内容と体制を再検討したことで、新たに計画された陶芸による授業実践が順調に進むようになった。 中学校での絵付けを行う授業は、毎年の実践で要領が良くなっている。また、生徒への説明もより実践的となり、焼成の過程を実演により提示すること、中学校理科教科書に掲載された陶磁器と釉薬、それらの温度と色の内容を取り入れたことで、教科間の関連性が明確になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
アートとサイエンスを連携させる方策として、陶芸の学習の可能性が期待されている。陶芸の絵付けという授業が美術にとどまらず、理科の授業としての内容との関連性が明らかになりつつある。学習指導要領に示された内容の年次進行と、美術と理科の順序、およびその際に強調されるべき要点等を今後整理する予定である。 理科学習においては、当初、日常的な化学反応との関連を想定していたが、昨年度からの実践で、釉薬の色が酸化還元反応によるものであるとの説明の可能性が示唆された。実際の発色については釉薬に含まれる物質だけでなく、熱する際の温度やその時間、加熱時の酸素の量など様々な条件が影響することが理科教科書に記載されているので、中学生への説明は難しいが、発色の結果だけでなく反応の過程についても思考できるような提示の仕方を探る予定である。 美術教育においては陶芸の授業の位置づけも含めて色の学習とも関連付ける方策を研究課題とする予定である。 さらに地域学習の題材として、地元の窯業の実態だけでなくその歴史や、釉薬の観点から地質学的な状況についても調査し、生徒達に効果的に示す方策の追求については継続する。
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Causes of Carryover |
本研究の契機となった「地域の色・自分の色実行委員会」が、母体となる組織の人事異動等により、当初の研究計画の実施が困難となったが、当初のテーマを維持しつつ、その研究を遂行するために、研究体制の大幅な変更が余儀なくされた。また、COVID-19感染症拡大により、学校へのアクセスや授業実践として実施できる内容が大きく制限されたことも研究計画の進捗を遅延せざるを得ない要因であり、これらにより単年度あたりの経費が縮小することとなった。また、情報交換の手段がオンラインで行われるようになり、移動のための経費の使用額が縮小している。 絵付けの作業を主とした陶芸の授業実践を繰り返しているが、授業の形式、手順は毎年同じであるものの、作品の質が向上している様子が見られるので、単なる繰り返しではなく、新たな要素を加味しながら他の要素は条件統一をしつつ実践をくり返している。研究の規模は縮小されているが、期間を延長しているので当初計画よりもゆっくりではあるがデータの蓄積は進んでいる。次年度が最終年度となるので、当初計画通りに、実践データの蓄積を継続するとともに、それらをまとめ、適切な学会等で報告するために予算を使用する計画である。
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